「技術ゼロからGoogleに挑戦した話」インターンシップ 山のトンネルさんの映画レビュー(感想・評価)
技術ゼロからGoogleに挑戦した話
映画「フリーガイ」(2021)でメガホンを取ったショーン・レビィ監督の代表作「インターンシップ」(2013)を見た。コメディなのにストーリー性もあり、学生だけでなく、転職を考えている人や転職したばかりの人、管理職の人まで楽しめる秀逸な構成が魅力的な本作。ここまで世代を超えておすすめできる作品は珍しい。
●中年の危機
映画「インターンシップ」は、異なる世代が互いに学び合い、成長していく姿を描く。腕時計の営業マンとして働いていた、中年のビリーとニック。物語は、彼らの会社が倒産し、職を失うところから始まる。新しい仕事を見つけることができずに落ち込んでいた中、ビリーが偶然Googleのインターンシッププログラムを見つけ、2人は大学生を装って挑戦することに。果たして、技術的なスキルが全くない彼らは超優秀な学生たちとどのように競い合うのか。
●世代間の交流と成長
この映画の魅力は、異なる世代間の交流と成長を描いている点にある。ビリーとニックは、技術的なスキルが不足しているため、若いインターンたちから軽蔑される。しかし、彼らは自分たちの経験と情熱を活かしてチームに貢献し、次第に信頼を得ていく。一方で、若いインターンたちもビリーとニックから多くを学んでいく。
年上世代は年下に、年下世代は年上に。
違う世代から学べることは多くある。
学生たちはインターネットでググるだけでなく、人との関わりを大切にすることを学ぶ。一方、おじさんたちは自分のスキルや経験だけに過信するのではなく、新しいことを学ぶ姿勢を持つことを学ぶ。
もし、この映画が大人をインターンシップに参加させ、大学生を再教育することだけに焦点を置いていたら、陳腐な映画になっていただろう。
しかし、彼ら自身もGoogleのインターンを通して成長する姿が描かれる。これによって若者へのただのお説教映画ではなく、ヒューマンドラマとして聴衆の心に残る作品へと昇華している。
●Googleの文化とインターンシッププログラム
映画はGoogleの職場環境を詳細に描写しており、カラフルなビルや自転車、シャトルバスなど、まるで楽園のような職場が描かれている。インターンたちは、コーディング、ヘルプラインの対応、バグの特定など、さまざまな課題に挑戦していく。これらの課題は、技術的なスキルだけでなく、創造力や問題解決能力も試されるものであった。ITスキルの全くないおじさん二人は役に立つのか。これも注目のポイントだ。
●名言
映画の中で特に印象的な名言は、「媚を売ることが教えを乞うことではない」というものだ。この言葉は、ビリーとニックが若いインターンたちに対してただ媚びるのではなく、自分たちの経験と知識を共有し、互いに学び合う姿勢を持つことの重要性を説く。
人類で初めて月面に降り立った、アームストロング宇宙飛行士は、自身の月面着陸について「人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩だ」と言った。
アームストロングではないが、この映画はまさに「どんなに小さな蟻の歩みでも、それは蝶の羽ばたきのように変化する」といったメッセージが込められているように感じた。
人間にとって小さな一歩を歩み出すことは「変化」といえよう。だが、人は変わることに対して消極的だ。なぜなら、自分が変わることは恐怖だからだ。未知の自分、未知の将来。未知ほど、不安を煽るものはない。しかし、人類は恐怖を受け入れ、変化し続けたからこそ繁栄を続けられたのである。
もちろん全てが良かったとは言えない。時代を振り返ると、良い変化も、悪い変化もあった。
ただ一つ言えるのは、我々は変わらなければ、変えられてしまう存在だということ。それは、時代が変化しているからだ。
これを踏まえた上で、変化をどう受け止めるかはその人次第である。
変わるか、変わらないか。
僕らには選ぶ権利がある。
●まとめ
「インターンシップ」は、コメディ映画としての楽しさだけでなく、世代間の交流や成長、変化の重要性を描いたヒューマンドラマとしても見応えのある作品である。ビリーとニックの物語は、変化を恐れずに新しいことに挑戦することの重要性を教えてくれる。また、彼らの奮闘を通じて、観客は自分自身の成長と変化に対する新たな視点ができると思う。