「後半盛り込み過ぎでは」WOOD JOB!(ウッジョブ) 神去なあなあ日常 tochiroさんの映画レビュー(感想・評価)
後半盛り込み過ぎでは
「銀の匙」と似たような設定で、受験競争に落ちこぼれた主人公が、現状逃避的(きっかけは美女がモデルのポスター)に林業研修生に応募する。しかし美女との出会いと、自然に囲まれてのスローライフをイメージした主人公を待っていたのは、厳しい教官のしごきと命を落とす危険のある過酷な労働だった。
人生に目的も生きがいも見いだせない主人公が、弱音を吐きながら段々杣人として成長していく過程は目新しくはないものの、染谷将太の素直な演技もあって応援したくなる。
鬼教官を演ずる伊藤英明は正にそのまま林業のプロになれるくらいの熱演だし、優香もパワフルな夫に負けない、逞しい女房振りを発揮している。最近の彼女は演技の幅が一挙に拡大し、様々な作品で活躍しているのは嬉しい限りだ。
ただ後半の展開にはいささか不満が残る。
子供が行方不明になった時の山神様の助力が、あんなに直接(物理)的である必要はあったのだろうか。
親の電話に出るため祭りの行列に遅れた勇気を、直紀がバイクに乗せて先行する男たちをかき分けて爆走するが、このようなことが許されるのだろうか。
ラスト男根を模したご神木にまたがった勇気が、地球最後の日を思わせるレールを下降して、女陰を模した子宝祈願のシンボルに突進していくシーンにしても、果たしてこれは本来の祭りの姿として許容されるものなのだろうか。周りの人々は特に怒っていないので許容されるのかもしれないが、それなら地元の人間も御柱祭のように我先にご神木に取りついても良いのではないだろうか(私の住んでいる地域にも祭りはあるが、伝統としきたりには厳しく、特に新顔が勝手な事をすることは絶対に許されない)。
前半の「杣人や林業に携わる人々の状況を真摯に描く」雰囲気から一変して、少しエピソードを盛り込み過ぎて上滑りしているような気がする。所詮ドキュメンタリーではなくエンターティンメントだと言ってしまえばそれまでだが、スローライフ研究会に向けた厳しい批判の眼差しと、何か山村の祭りを茶化したような描写との整合性が取れていないようで、多少の違和感を覚えた。
エンドクレジット後のワンショットはそれまでの流れとドンピシャで、非常に良かった。