「「人間」を真正面から描き切った銭ゲバコメディの金字塔!! ミスター・ファッキン・ベルフォートに神の御加護を✨」ウルフ・オブ・ウォールストリート たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
「人間」を真正面から描き切った銭ゲバコメディの金字塔!! ミスター・ファッキン・ベルフォートに神の御加護を✨
実在のブローカー、ジョーダン・ベルフォートの波乱に満ちた半生を描くブラック・コメディ。
監督/製作は『タクシードライバー』『シャッター アイランド』の、巨匠マーティン・スコセッシ。
主人公ジョーダン・ベルフォートを演じるのは『タイタニック』『インセプション』の、名優レオナルド・ディカプリオ。またディカプリオは本作の製作も担当している。
ジョーダンの親友でビジネスパートナー、ドニー・アゾフを演じるのは『ナイト ミュージアム2』『マネーボール』のジョナ・ヒル。
ジョーダンの妻、ナオミを演じるのは『アバウト・タイム 愛おしい時間について』のマーゴット・ロビー。
ジョーダンに影響を与えた投資銀行L.F.ロスチャイルドのブローカー、マーク・ハンナを演じるのは『10日間で男を上手にフル方法』『ダラス・バイヤーズクラブ』の、後のオスカー俳優マシュー・マコノヒー。
ジョーダンの父親、マックスを演じるのは『スタンド・バイ・ミー』(監督)、『最高の人生の見つけ方』(監督)のロブ・ライナー。
ジョーダンの協力者であるドラッグの売人、ブラッド・ボブニックを演じるのは『ナイト ミュージアム2』やテレビドラマ『ウォーキング・デッド』シリーズのジョン・バーンサル。
ジョーダンの弁護士、マニー・リスキンを演じるのは『ディープ・インパクト』『アイアンマン』シリーズ(監督/出演)のジョン・ファブロー。
第71回 ゴールデングローブ賞において、主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞!
〈そこにいるのは 人というより 物の怪だった ………
金がツモリすぎ 彼の脳は すでに常軌を 逸している……〉
これは漫画家・福本伸行の大傑作ギャンブル漫画「銀と金」に登場する大富豪、蔵前仁を表した言葉。
権力と財力がいかに人間を狂わせるのか、それを描いてきた作品は古今東西沢山ありますが、本作ほどカネに溺れた人間を滑稽に、サイテーに、そして何より面白く映し出した作品は無かったのではないでしょうか!?
ジョーダン・ベルフォート率いるストラットン・オークモント社の面々は、隅から隅まで、揃いも揃ってクズばかり!粗野で下品でアホでバカで自分勝手で差別主義者で…。身近にいたら死ぬほど嫌だけど、離れて観察する分にはサイコーに面白い😂
「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」というチャップリンの言葉を思い出さずにはいられない、抱腹絶倒の大傑作コメディ映画だと思います♪
スコセッシ監督の代表作の一つとして、チンピラマフィアの成り上がりと没落を描いた『グッド・フェローズ』がある。これはまぁ説明不要の名作な訳だけれど、本作はこれのセルフリメイクと言ってもよいような映画。
主人公の人物像からお話の全体の流れ、そしてその結末まで、『グッド・フェローズ』を想起せずにはいられない。クライマックスにパンクロック調の「ミセス・ロビンソン」が流れるというのも、やはり『グッド・フェローズ』のシド・ヴィシャス版「マイ・ウェイ」を意識してのことなのだろう。
ただこの2作、決定的に違うのは本作はもうバキバキにキマッちゃってるという点。
両者とも実在の人物を主人公に据えた映画なのだが、本作の方が明らかに戯画化されているというか悪意があるというか、実際は流石にここまで無茶苦茶ではなかっただろうということは誰の目から見ても明らか。リアリティよりもエンターテイメントを重視したということなんでしょう。
冒頭からとにかく嵐のようなFワード。なんでも本作は作中に登場したFワードの回数が世界一なんだとか。一体誰が数えたんだ💦
とにかくマシンガンのように汚い言葉が飛び交い、それと呼応するように作中の描写もどんどん下品に。チンポ、おっぱい、セックス、クスリ、なんでもありの危険な無法地帯へと突入していく。
正直、ここまで下品な映画は未だかつてまで観たことがない、というレベルのカオスっぷりなんですが、それが面白いんだ〜〜!✨😆
異常な程のハイテンションで映画は突き進み、180分という長尺が全く苦にならない。爽快なまでのドタバタ劇に、マジで最初から最後までずっと笑いっぱなしみたいな映画でした。
主人公ジョーダンは救いようのないクズ。障害者差別、女性差別、職業差別、なんでもござれの資本主義の権化。金を稼ぐことに中毒になってしまい、女とクスリ以外にはなんの興味も示さないというまさに物の怪。
そんなクソ野郎なんだけど、不思議と不快感は一切ない。むしろだんだんコイツのことを好きになってきちゃう。
「ベルちゃんは社長を辞めへんで〜〜!!」と演説をブチかますシーンなんて、なんか知らんが目頭が熱くなってしまった。
特に好きなのは超スーパーヤバいおクスリ「レモン」をキメてしまってからの一連のドタバタ劇っ!『Mr.ビーン』や『ドリフ大爆笑』を思い起こさせるベタベタのお笑い描写なんだけど、これがもうヒドすぎてヒドすぎて…🤣フェラーリのガルウィングの開け方とかもうね…。コイツほんとどうしようもねえな!
このシークエンスで感心したのは、ぶっ殺されても文句を言えないようなミスを犯したドニーを、サイテーすぎる『ポパイ』のパロディで救い出す場面。殺したいほどの怒りを抱えながらも、ここでドニーを見殺しに出来ないのがジョーダン・ベルフォートという男。文字通り地面を這って、マウス・トゥ・マウスでドニーを救助する。この描写のおかげで、あぁなんだかんだでジョーダンって根っからの悪人ではないんだなってことがわかるし、彼に対して親近感を覚えてしまう。「不良が良いことをすると好感度が上がる」理論なのは重々承知なのですが、やっぱりこういう描写があるのと無いのとでは、主人公に対する思い入れの深さがガラッと変わってきますよね。いやー、ここ本当良いシーンだったなー。
本作でベルフォートを演じたのはレオナルド・ディカプリオ。「レオ様」と呼ばれプリンスのように扱われていた彼が、まさかここまで身体を張った演技をする役者になるとは、誰が想像出来ただろうか?
軽薄で下衆な男を完璧に演じきっており、その演技力というか胆力には脱帽。
大嵐にあってしまい船が沈没するという『タイタニック』な展開をディカプリオ本人がやっちゃうという大胆なパロディ。そりゃこんなん笑うわっ😆
しかもロマンチックに命を散らした『タイタニック』に対して、こちらは「俺はシラフで死にはせんぞっ!」と言い放つ。…良いセリフだなぁ。自分も最期の時はこう叫ぼうっと。
とまぁ、ここまでやるのかと思わせるディカプリオの暴走演技が素晴らしく、彼がリミッターを解除してぶっ飛ばしてくれたからこそ、この映画はここまで面白くなったのだろう。やはりレオ様こそハリウッド最大のスターなのです✨
サイテーな人間ばかりが出てくる映画。でも「人間」ってこういうもんだよね。
有り余るほどの金と権力があれば、誰だってこんな感じに狂い出すだろうし、他人を見下すクソッタレになるだろう。
良い女がいればマスだって掻きたくなる。不倫だってしたくなる。お山と茂みを丸出しにしたマーゴット・ロビーにウッフ〜ン💕と迫られて、それを我慢出来る妻帯者がどれだけいることか。
この映画には悪意と狂気が満ちているが、一点の嘘もなく「人間」を描ききっている。この正直さこそが本作の最大の美点であり、全編に渡り漲っている爽快感の源なのだろう。
『グッド・フェローズ』では主人公が抜け殻のようになって終わるが、本作ではその「先」がさらに描かれる。
栄枯盛衰…からのさらに盛!
全く反省していないジョーダン・ベルフォートという男。だがそれが良い。それで良い。人間なんてそうそう反省しないんだから。
本作は、映画史にその名を刻む名作『グッド・フェローズ』を、全ての面においてバージョンアップさせた大名作っ👍
スコセッシ監督、当時70歳。古希でこれを作り上げたってマジかよっ!?💦
スコセッシはジョーダン・ベルフォートを遥かに凌ぐ化け物だった…ということですかね。
※デイミアン・チャゼル監督の問題作『バビロン』(2022)。
本作を観て「あぁ、チャゼルはこれをやりたかったんだなぁ…」と1人納得。だからマーゴット・ロビーを起用したんだね。
スコセッシに戦いを挑む、その心意気や良し!…だけど、酒池肉林のどんちゃん騒ぎ描写は完全にスコセッシが上。遥かに上。圧倒的に上。比べものにすらならない。
チャゼルに才能があることは認めるが、スコセッシの真似をするのは無謀。相手は本物の化け物なんだからさ。