「21世紀に作られた最良のアクション映画シリーズだと心から思います」イコライザー あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
21世紀に作られた最良のアクション映画シリーズだと心から思います
イコライザー
2014年アメリカ映画
心を鷲掴みにされました
これこそ21世紀に相応しいアクション映画です
主人公は引退した元特殊工作員
そのスキルを活かして他人を救う
それだけのお話しです
ありがちな設定ですが語り口に独特の味わいがあります
淡々として派手なシーンや小粋なセリフなどは極力排されて淡々とストーリーが積み重なっていきましかし暴力の描写は克明で観ているものに身体的な痛みを感じさせるほどのものです
しかしアクションシーンはド派手な立ち回りはあってもののほとんど一瞬で終わります
これ見よがしの丁々発止はありません主人公のアクションは暴力のプロフェッショナルが必要最低限の暴力を相手に振るうのみのものです
むしろ暴れ回るのは敵ばかりです
イコライザーとは平準化するものという意味です
ほらオーディオ装置にもイコライザーがありますよね
高音、低温を高めたり低めたりして音質を平準化する機能です
では本作のイコライザーとは?
暴力を平準化する存在だという意味でしょう
麻薬、暴力が一般社会を浸食して
善良な庶民の日常生活と隣合わさってしまった欧米の21世紀の社会で暴力の偏在を平準化するもの
それが主人公マッコールです
本来は法と警察がその役割を果たすはずだったのにそれが21世紀ではもはや正しく機能していない
だから暴力のイコライザーが必要なのだというテーマです
観客がカタルシスを感じるのはそそれが正しいと思えるからでしょう
欧米の社会の物語?
日本はそこまで行っていない?
そうでしょうか?
世間を騒がせている闇バイト事件をみるならそうとは言えなくなってしまってしまっています
暴力肯定の映画?
確かにそうかも知れません
それでも本作に救いがあるのは主人公マッコールの虚無的な目が何も興奮も憎しみの感情も映していないことです
淡々とただやるべき最低限を果たすその為に必要なことを見積もる眼差しそれだけなのです
相手を見て○秒だなとひとりごちる
それはこれから自らがふるう暴力には彼は何の楽しみも感じないといことを観客に理解させています
暴力でしか解決しないことがある
話をしても通じない暴力でしか会話できない相手というものは確かに存在する
私達はウクライナ戦争でそれを学びました
本作が公開された2014年はウクライナのクリミア半島がロシアに侵略された年でした
それがウクライナ戦争の発端でし
そして本作の悪はロシアンマフィアでその黒幕はプーチンと良く似た名前でした
だからと言って単にロシアを揶揄して非難するような薄ペラい映画ではありません
むしろ
そんな風に暴力が理不尽に簡単に振るわれる世の中になっていないか?そのことを世に問う深さの余韻が大きい映画です
何故このような世の中になってしまったのか?
差別だとか将来への絶望?
そんなものを言い訳にして自分を貶めるなと主人公のセリフにありました
本作公開の頃、ブラックライブズマター運動が盛り上がっていた時期でもありました
だから主人公マッコールは黒人で設定されたのだと思います
デンゼルワシントンの類い稀な名演技が暴力の肯定映画のようでそうではないという本作のテーマが
際立っているのだと思います
21世紀に作られた最良のアクション映画シリーズだと心から思います
007もミッション:インポッシブルもボーンシリーズもこの点で本作には及ばないのです