楽園の瑕 終極版のレビュー・感想・評価
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【”酔生夢死の酒”ウォン・カーウァイ監督ならではの、色彩感溢れる武侠群像劇。ストーリーは一見難解だが、良く観ていれば深い余韻が得られる映画である。】
ー 武侠小説「射雕英雄伝」に登場する東邪と西毒の若き日の物語。レスリー・チャンやトニー・レオンら豪華スターを揃えて錯綜した人間模様を壮麗な映像で描き、目を奪う。ー
■砂漠の宿屋で、“西毒”こと欧陽峰(レスリー・チャン)は殺し屋の元締めを営んでいる。
彼が剣のために捨てた女は、兄嫁となった。
毎春、親友の“東邪”こと黄薬師(レオン・カーフェイ)が訪ねて酒を飲んでいく。
男装の剣士・慕容燕(ブリジット・リン)は、女の姿に戻って約束の場所で黄薬師の訪れを待つが、彼は現れない。
◆感想
・今作は、資料を読むと、評価が真っ二つに分かれた作品であるらしい。
否定派は、ストーリーが良く分からない・・。
肯定派は、ウォン・カーウァイ監督ならではの、独自の世界観が描かれている。
ー 私は、勿論後者である。武侠小説「射雕英雄伝」の概容だけ、若干頭の端に会った事も寄与しているかもしれないが・・。-
・レスリー・チャン、レオン・カーフェイ、ブリジット・リンを始めとして、盲目の剣士を短いシーンであるが演じたトニー・レオンたち、役者陣の印象も、作品に余韻を与えている。
・撮影は勿論、クリストファー・ドイルである。余り手持ちカメラ感は感じなかったが、ウォン・カーウァイ監督独特の色彩感を捉えていると思う。
<ウォン・カーウァイ監督と言えば、「欲望の翼」「恋する惑星」「ブエノスアイレス」傑作「火様年華」であると思っていたが、その後、今作の様な歴史物語を撮っていたとは全く知らなかった。
今作は、確かに、ストーリー展開的には難解ではあるが、私は”映画らしい余韻を感じる映画だなあ。”と思った作品である。>
カーウァイ映画
チェロの音色、赤やみどりや黄色、ストップしたり遅くなる映像、アップの多用、モノローグ、広い広い自然、ザラザラ画面ーカーウァイ監督の映画そのものだった。レスリー・チャンは仲介人だけれど、立ち位置がよく理解できなかった。ひたすらモノローグで過去にひきずられているし。マギー・チャン含め、女性が絡むと少し話に入って行けた。トニー・レオンはとても素敵だった。
でも、私にはちょっとつらい(途中
で眠気催す、という意味で)映画だった。
レスリー・チャンの科白が記憶に残る
‘94「楽園の瑕」のディレクターズカット版。今回見て分かったこと、20年前のオリジナルを観たときに感じたこと、それぞれに異なる。
クリストファー・ドイル独特のかすれた、荒い画で描かれる剣士たちの戦いのシーンが、スクリーンを覆い尽くす。しかし、物語の本筋は、切ない純愛の話である。
マギー・チャン、カリーナ・ラウ、ブリジット・リンと素晴らしい女優陣が出演しているにも関わらず、彼女たちは回想シーンにしか登場しない。このことで、男と女の地理的時間的距離がいかに大きなものかを感じさせられる。
出てくる男たちの間には、生きていくための金と命をやり取りする緊張感が漂う。しかし、お互いがこの孤独の中を生き抜いているという一点で共感を抱き、互いの臆病に気付いたときに友情らしきものが芽生える。
レスリー・チャンの「他人に拒絶されるのが怖いなら、自分から先に拒絶すればいい。」というセリフが頭から離れない。自ら命を絶ってしまった彼自身の言葉であるかのように思ってしまう。人を愛すれば愛するほどに、自らの弱さと向き合わなくてはならない。いかに自分が臆病で、相手からの拒絶を恐れているかを思い知らされる。
ここにいる男たちは、自分の弱さと戦いながらも、女への想いを貫き通す。誰かの手助けを受けることもなく、まるで砂漠で馬賊と戦うようにそれは孤独だ。
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