メキシカン・スーツケース ロバート・キャパとスペイン内戦の真実 : 映画評論・批評

2013年8月20日更新

2013年8月24日より新宿シネマカリテほかにてロードショー

現在進行形でスペイン内戦の傷痕を伝えるドキュメンタリー

2007年12月、スペイン内戦を撮った126本のロールフィルム、ネガにして4500枚が入ったスーツケース3個がメキシコで発見される。撮影者はロバート・キャパ、ゲルダ・タロー、“シム”ことデビッド・シーモアという3人の戦争カメラマン。70年間行方不明になっていた写真史的にも重要なネガを、正統な相続人であるキャパの弟、コーネル・キャパが創設したICP(国際写真センター)が取り戻したのだ。

本作は、それらのネガがなぜメキシコにあったのか? というミステリアスな謎に迫るだけでなく、戦争写真のスタイルを確立させた3人による写真の意義を問き明かしていく。

東欧ユダヤ系移民で、パリ在住だった3人は、糊口をしのぐために「ロバート・キャパ」という架空のカメラマン名を名乗る。そして彼らはカメラを武器にして歴史を変えたい一心で、1936年総選挙でフランコ政権が誕生し、反ファシズム陣営である人民戦線との間で内戦状態になったスペインへ向かう。命を顧みず、勇気を持ってギリギリまで被写体に近づいた彼らの写真は臨場感にあふれ、戦争写真の歴史に新たな1ページを刻む。

驚くことに、現在のスペインでもこの内戦についての正しい歴史教育が行われていないらしい。この内戦は多くの亡命者を生みだした。ピレネーを越えてフランスへ渡った貧しい亡命者たちは過酷を極めた。一方で自由を求めてメキシコへ渡った数万人の亡命者たちはまるで「栄光への脱出」(1960)のような結末を迎えたようだ。冒頭、これらスペイン人移民の末裔たちが先祖の遺骨を発掘しようとするメキシコの共同墓地のシーンで、今も残る内戦の傷痕を生々しく伝えている。

ネガを残すために尽力したキャパの暗室助手にも光が当てられ、写真というメディアが持つ影響力をいっそう深く実感させる。

(佐藤睦雄)

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