「リアルのハエが持つ、不気味さや不潔感を見事に払拭して、誰もが拍手を送りたくなるヒーローが誕生。」マッキー 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
リアルのハエが持つ、不気味さや不潔感を見事に払拭して、誰もが拍手を送りたくなるヒーローが誕生。
インド人の発想の凄さに脱帽する作品。
「マッキー」とは、インド語でハエのこと。何と言ってもハエに転生した主人公が、自らを殺した悪党に、完膚無きまで復讐を果たす内容の作品。
コラ!、ネタバレするなと怒らないでください。だいたいですよ、どうやったら小さなハエが人間に復讐できるのですか。想像できないでしょう。コメディながらも、ちゃんと納得できる形で復讐の過程を説明つけちゃったのだから、キンチョーのコマーシャルもビックリの世界でございます。
そもそも日本人が思いつく昆虫ヒーローはハチぐらいでしょう。誰がハエがヒーローになるなんて思いつくことでしょうか。
また、ハエと人間のあり得ないバトルシーンとハエの人間的な表情をリアルに再現したことも特筆です。これは映画『ロボット』を超える2234カットの膨大なVFX投入して実現したもの。IT技術と人海戦術で一見不可能と思えるような表現でもリアルに描写してしまうところがいかにもインド的だと思うのです。
さらに、ハエのキャラクターが可愛いのですね。まるで仮面ライダーかと思えるくらい大きなお目々がチャームポイント。しかもピクサーのキャラに似て、明るくてお調子者の性格が親しみやすさを感じさせるのです。リアルのハエが持つ、不気味さや不潔感を見事に払拭して、誰もが拍手を送りたくなるヒーローとなったのでした。
さて、物語の冒頭では、まだハエは登場しません。悪役となる建設会社社長のスディープの気に入らない奴は殺してまで、荒稼ぎするという強欲非道ぶりや無類の女好きなところがまず示されます。
一方お調子者の貧乏青年ジャニは、向かいに住んでいるヒンドゥに2年も前から片思いを続けていたのです。あの手この手でアピールするもの、会話すらろくにしてもらえなかったのでした。でもヒンドゥもまんざらではなかったので、からかって無視しているふりをしていたのでした。
ある日、ヒンドゥは自らかかわっているボランティア活動のスポンサーとして、スディープと出会ってしまいます。スディープは一目で美人のヒンドゥに魅了されてしまいます。密かにヒンドゥを尾行したスディープは、彼女に付きまとうジャニーを自分の恋路を邪魔する恋敵と勝手に思い込み、ジャニを誘拐。そのまま殺害してしまいます。
ずいぶん長い前振りですがここからが本番。
殺されたジャニーの魂は、失われずに一匹のハエに宿ります。なぜハエなのかは謎です('◇')ゞ
ハエとなったジャニは、愛するヒンドゥを守るため、小さな体を臆するともなくスディープとの戦いに挑んでいきます。
最初は付きまとい作戦から、スディープを不眠不休のノイローゼ状態へ追い込みます。次には取引先との関係悪化を狙ったジャニのアイディアがクリーンヒット。スディープにわざと見えるように、顧客のオデコや頬にジャニは羽を止めるのでした。すっかりハエノイローゼにかかってしまったスディープは、ハエを見るだけでたたきにかかるのです。たとえ顧客の頭や顔としても。顧客を不本意にも殴ってしまうスディープの狂乱ぶりと勝ち誇ったようなポーズを決めるジャニが可笑しかったです。
ボディランゲージを屈指して、ジャニはヒンドゥに自分の存在を伝えることに成功します。以後、ボディランゲージで二人の間に意志が通い始めるのです。二人の「会話」シーンもジャニの動き方が可愛くて、可笑しかったです。それとマイクロクラフトのクリエーターだったヒンドゥは、器用にもジャニの住宅を作ったり、殺虫剤避けのゴーグルをつくってプレゼントするのでした。ゴーグルの効果抜群で、スディープからの殺虫剤攻撃にも耐えられるようになったのです。
ヒンドゥとジャニは協力し合って、スディープを追い詰めていきます。それは税務監査を誘発して、破産に追い込んだり、家中を爆破したり、一匹のハエがやらかした作戦としては奇想天外なものばかりでした。しかし、二人が協力し合っていることが、スディープにバレて、ヒンドゥにピンチが迫ります。一方、ジャニもスディープが雇った祈祷師に呪われた二匹のひばりに急襲されて、絶体絶命のピンチを迎えます。ひばりvsジャニの空中戦はなかなか、ハラハラさせられました。
最後は。身を挺してまでヒンドゥを守ろうとする姿に思わずホロリとさせられました。
だけどハエとなったジャニは不滅なようで、続編でもヒンドゥを守っていく感じがアリアリと…(^^ゞ
最後のエンドロールでは、ジャニと仲間のハエで踊るハエダンスがユニーク。したまちコメディ映画祭の上映会では、ステージに踊り子さんたちも上がり、観客と一体となって、このハエダンスを踊って締めくくりました。上映途中でも、ここぞという場面でクラッカーを鳴らすことが義務づけられた上映会だったので、ジャニの復活シーンは、パンバンパンと爆竹が鳴り響き、かなり盛り上がった上映会となりました。相の手が入る上映なんて、まるで歌舞伎みたいですけど、そのほうが一体となってジャニの奮闘ぶりを応援しているような感じがして楽しかったです。
インド映画特有のダンスシーンもセーブして、ワールドワイドに受け入れられる演出に変わってきていると思います。少なくとも映画『ATARU』のドタバタよりは、数段面白かったです。