世界一美しい本を作る男 シュタイデルとの旅のレビュー・感想・評価
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創作意欲かきたてられた♡
アーティストと人生を共にする勢いで迷惑なくらいに頑固に、時には意見しながら丁寧に一冊の本(作品)を作る話。
デジタル化で本はなくなるなんて言われてるけど”ここ10年はシュタイデル社の時代”という言葉のように紙の手触り、音、感触にこだわった、嗜好品としての本の形の提示には、わくわくした。
写真家や作家のコレクターはよくいるけど、出版社のコレクター(シュタイデル社が作った本だけ集める人)がいるなんてびっくり。
ついつい作業になりがちな仕事も、どうして作るのか、どのようにつくりたいのか原点に何度も立ち返り、徹底的にこだわることも時には必要なのかな、と思わせてくれる人だった。
だからこそもう少し丁寧に作って欲しかったかなあ。ドキュメンタリーなの?映画なの?って感じだった。映像自体はかなり綺麗なもので、最初は「プロフェッショナル」みたいな感じなのかなーと思ってみてたけど、途中絵も音もメディアアート的な映像が差し込まれたりして、90分なのに間延びしてる感ある。どっちかにして、もう少しひとつひとつの意思決定の過程をきちんと見たかった。
たぶん見る人によって求めるものが違って、違う感想になるんだろうなこれ。一人で行かずに誰かと行けばよかった 笑
世界中のアーティストを虜にする"プロ"の情熱
ドイツにある小さな出版社シュタイデル社。
この会社の社長を務めるゲシュハルト・シュタイデルの仕事を追いかけた映画だけど、とにかく、シュタイデルと仕事を一緒にしている人々にまず圧倒される。カール・ラガーフェルド、ギュンター・グラス、ロバート・フランク、エドワード・ルシェ…。しかもシュタイデルの仕事ときたら、単純に本を作るだけにおわらない。本を企画し、構成し、編集し、デザインし、最後にはプリントのチェックまで行う…もう印刷屋ではなく、プロデューサーです。
あこがれのエドワード・ルシェに「コストを抑える方法が2つある。ひとつは印刷の方法を変えること、もうひとつは紙質を抑えること。一般の人はこの紙質でもわからないかもしれないが、本当にプレミアムの質感をだすなら…」と意見する。
ニューヨークの打ち合わせの直前には電話で「クライアントからの依頼だから…」とか、「最初にこういったはずだ、依頼と違う。これではできない」とか、やはり受注側だからこそのアーティスト達からの要望にたいして、苦悩する姿をみせるかと思えば、全くそんなことはなく、装丁から紙質、構成までとにかく自分の言いたいことは言う。
全編の中で、もっとも深く入り込んだのがジョエル・スタンフフェルドとの打ち合わせで「iDobai」を完成させるまでの間に、ジョエルの迷う姿をむしろリードしているようにも見えるし、その装丁、後ろのドでかいバーコードまでジョエルの商業主義を完膚なきまでに悪趣味に昇華させるあたりはとてもじゃないけどただの印刷屋には見えない。
「旅は好きではないけど、会って打合せをするのが一番。2、3ヶ月かかる仕事が4日間で終わる」というシュタイデルの姿はまさにプロそのもの。クライアントの依頼にこたえるのではなく、クライアントの要望そのもの、どんな本を作りたいかにこたえるために奔走すがたに、ただただ唖然とするだけでした。
また、劇中で印象深かったのは…うろ覚えですが、インターネットとかが出回ったこの世の中だからこそ、ここまでこだわって本をつくるということを言ったと思います。
紙の手触りにこだわり、インクのにおいにこだわり…。
本を一つの芸術作品に昇華する意味合いが本当に伝わりました。
楽しみながらも、こだわりぬいて仕事をする。
だれもが憧れ、だれもが挫折することを本当にいとも簡単(そうにみえてしまう…)にこなしている姿は勇気づけられるとともに、自分の何かを見直すきっかけになりました。
プロ…本当にすごいです。
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