世界一美しい本を作る男 シュタイデルとの旅のレビュー・感想・評価
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【本は、読むだけではなく装丁まで楽しみたいモノである。今から10年前のドキュメンタリー作品であるが、魅入られるなあ。】
ー 収録作品や紙、インクまで徹底的にこだわって作られるシュタイデル社の本。
その妥協なき本作りの姿勢と、一つの作品として生み出される本の美しさはため息もの。
一冊は欲しい欲しいものだが・・。-
◆感想
・ドイツの小さな出版社・シュタイデル(社員50名)を経営するゲルハルト・シュタイデル。
彼は60歳を過ぎてもなお世界中を飛び回り、アーティストたちのアトリエに自ら足を運ぶ。
- 現地現物で、注文主と遣り取りする会話。それは、本への愛情に満たされている。-
・その旅は、クリエイティブな発見と驚き、普遍的な人との繋がりの大切さを教えてくれる。
<ここ10年で、私の住む街の本屋は半減した。
当然、店に行って欲しい本を手にする機会は激減した。
10年前から、そのような状況下、Amazonを利用する機会が増えたが、4年前からAmazonとの契約を解約し、欲しい本は近所の本屋から注文する事にした。
時間はかかるが、欲しい本が手元に届けられる嬉しさは、倍加した。
シュタイデル社の本は我が家には無いが、日本のみすず書房の本は、定期的に購入している。
何より、新しき本が届けられた際の、本のページを開いて、インクの匂いを嗅ぐ際の心躍る瞬間と、素敵な装丁に包まれた本を読む僥倖感は、何事にも代えがたいと思うのである。
本を愛する人にとっては、タマラナイドキュメンタリー作品であると思います。>
創作意欲かきたてられた♡
アーティストと人生を共にする勢いで迷惑なくらいに頑固に、時には意見しながら丁寧に一冊の本(作品)を作る話。
デジタル化で本はなくなるなんて言われてるけど”ここ10年はシュタイデル社の時代”という言葉のように紙の手触り、音、感触にこだわった、嗜好品としての本の形の提示には、わくわくした。
写真家や作家のコレクターはよくいるけど、出版社のコレクター(シュタイデル社が作った本だけ集める人)がいるなんてびっくり。
ついつい作業になりがちな仕事も、どうして作るのか、どのようにつくりたいのか原点に何度も立ち返り、徹底的にこだわることも時には必要なのかな、と思わせてくれる人だった。
だからこそもう少し丁寧に作って欲しかったかなあ。ドキュメンタリーなの?映画なの?って感じだった。映像自体はかなり綺麗なもので、最初は「プロフェッショナル」みたいな感じなのかなーと思ってみてたけど、途中絵も音もメディアアート的な映像が差し込まれたりして、90分なのに間延びしてる感ある。どっちかにして、もう少しひとつひとつの意思決定の過程をきちんと見たかった。
たぶん見る人によって求めるものが違って、違う感想になるんだろうなこれ。一人で行かずに誰かと行けばよかった 笑
世界中のアーティストを虜にする"プロ"の情熱
ドイツにある小さな出版社シュタイデル社。
この会社の社長を務めるゲシュハルト・シュタイデルの仕事を追いかけた映画だけど、とにかく、シュタイデルと仕事を一緒にしている人々にまず圧倒される。カール・ラガーフェルド、ギュンター・グラス、ロバート・フランク、エドワード・ルシェ…。しかもシュタイデルの仕事ときたら、単純に本を作るだけにおわらない。本を企画し、構成し、編集し、デザインし、最後にはプリントのチェックまで行う…もう印刷屋ではなく、プロデューサーです。
あこがれのエドワード・ルシェに「コストを抑える方法が2つある。ひとつは印刷の方法を変えること、もうひとつは紙質を抑えること。一般の人はこの紙質でもわからないかもしれないが、本当にプレミアムの質感をだすなら…」と意見する。
ニューヨークの打ち合わせの直前には電話で「クライアントからの依頼だから…」とか、「最初にこういったはずだ、依頼と違う。これではできない」とか、やはり受注側だからこそのアーティスト達からの要望にたいして、苦悩する姿をみせるかと思えば、全くそんなことはなく、装丁から紙質、構成までとにかく自分の言いたいことは言う。
全編の中で、もっとも深く入り込んだのがジョエル・スタンフフェルドとの打ち合わせで「iDobai」を完成させるまでの間に、ジョエルの迷う姿をむしろリードしているようにも見えるし、その装丁、後ろのドでかいバーコードまでジョエルの商業主義を完膚なきまでに悪趣味に昇華させるあたりはとてもじゃないけどただの印刷屋には見えない。
「旅は好きではないけど、会って打合せをするのが一番。2、3ヶ月かかる仕事が4日間で終わる」というシュタイデルの姿はまさにプロそのもの。クライアントの依頼にこたえるのではなく、クライアントの要望そのもの、どんな本を作りたいかにこたえるために奔走すがたに、ただただ唖然とするだけでした。
また、劇中で印象深かったのは…うろ覚えですが、インターネットとかが出回ったこの世の中だからこそ、ここまでこだわって本をつくるということを言ったと思います。
紙の手触りにこだわり、インクのにおいにこだわり…。
本を一つの芸術作品に昇華する意味合いが本当に伝わりました。
楽しみながらも、こだわりぬいて仕事をする。
だれもが憧れ、だれもが挫折することを本当にいとも簡単(そうにみえてしまう…)にこなしている姿は勇気づけられるとともに、自分の何かを見直すきっかけになりました。
プロ…本当にすごいです。
写真家にとっての写真集
本好きはもちろん、写真集や図録好きは絶対見るべし!ロバート・フランクが写真を選んでるシーンなんて垂涎もの!過去に撮りためた写真を、駄菓子屋が使うような安っぽい白い紙袋に無造作に仕分けしてあって、そこから合う写真を選び出す。
印象的だったのはジョエル・スタンフェルドがiphoneでドバイを撮った写真集をつくる場面。iphoneでみるデジタルイメージに印刷を合わせていく。レイアウトもiphotoでみることに慣れてる人々を意識して決めていく。スタンフェルドが何回もiphoneでどう見えるかを確認しながら色校正していく。そういった新しいチャレンジに臆すどころか、むしろシュタイデルの方からより果敢な提案が持ち込まれる。
シュタイデルが最も影響を受けたのがヨーゼフ・ボイス。1972年以降、ボイスが亡くなるまでの14年間、ボイスの作品のほとんどのプロセスに関わっていたそうだ。
うーん、そりゃあ、ただものじゃないわ(笑)
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