「興味深い作品ではあるが…」R100 荒川ラリーさんの映画レビュー(感想・評価)
興味深い作品ではあるが…
松本監督の作品は「さや侍」を除き、三作品すべて見ました。
私が物心ついた時分には、監督はすでにお笑いの世界では重鎮として活躍されていたので、監督がお笑いの世界にもたらしたと言われている革新的な偉業が、一体どういった類のものであったのかは、その前後をリアルタイムで見ることがかなわなかった私には知る由もありません。とは言え、芸人出身の映画監督には先人の北野武氏もおりますし、「みんな~やってるか!」が個人的にはツボにはまった作品でしたので、松本監督の作品にも少なからぬ期待を抱いておりました。
まづ前作の「大日本人」「しんぼる」についてですが、面白いところもあるけれど、個人的には苦手に感じてしまったというのが正直な感想です。大日本人のCGによる戦闘シーンはかなりの迫力がありましたし、しんぼるはアイテムの取り合わせの妙が興味深く、こうした掴みでファーストインパクトを与えられる手腕は、さすがお笑い界の重鎮といった感じで、中々好感の持てる滑り出しでした。
しかし、その後は展開を無理に引き伸ばしているような演出が目立ち、モチーフやキャラ設定の面白さがどんどん薄められているように感じました。本作にもそのような傾向を感じ、ボンテージに身を包んだ女優の方々のヴィジュアルは、登場のインパクトこそあれ、その後の物語では特に活躍する場面が用意されているわけではなく、結局は見た目の奇抜さだけで終わってしまったという印象でした。
そして、中盤あたりからこの映画のメタ的な構造が明らかになっていくのですが、その仕掛けも、物語を加速させるほどのきっかけにはならなかったように思います。
しかし、私が否定的に捉えてしまったこうしたテンポ感も、笑いという文脈で見れば、もしかすると画期的な試みであったのかもしれません。一級の芸術も、得てして凡人には理解しがたい高みの境地にあるものです。ですので、わかる・わからないに関わらず、こうしたアート作品もなるべくなら見た方がいいのかなと思いました。