MUD マッドのレビュー・感想・評価
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ある時にしか出会えない感情
人生にはある年齢にしか体験できない感覚がある
以前に女流作家が書いていた文章にこのような趣旨があった・・
『最近の10代はかわいそうだ。10代といえばプラトニックな恋を味わえる人生で唯一の時代といえる。それがマスコミや社会の大人の罠にはまって大人の都合のいいようにSEXにおぼれさせられている。そんなに早くSEXに夢中にならなくても手が触れるだけで心臓が張り裂けそうな恋愛を経験してからで十分間に合う。10代にしか出会えない感情を一生の宝にできるのに・・それは人生の損失といえる』
ストーリーや登場人物は日本ではお目に掛れないような世界だけれどヒーローではない男たちがいつまでも少年でいることと
愛にさまよう年をとれない女たちの物語かもしれない。
見て損はない。
大人の階段登る切なさ
某宇多丸さん風に言うと「恋愛映画ではないけど恋愛について考えさせられる映画」ですね。恋人のために戦い続けるマッドの男気と、マッドとの触れ合いを通して恋の酸いと甘いを知り。大人の階段登る少年のなんとも言えない切なさ感。いいですね。女性に幻想を抱く男性諸氏に。
様々な愛の形を知り、少年は大人になる
アーカンソーの川辺に住む二人の少年、エリスとネック。ミシシッピ川に浮かぶ島の森の中で木に引っ掛かったボートを見つけ、隠れ家にしようとするが、先客が居た。二人は風変わりな男、マッドと密かに奇妙な交流を続けるが、マッドは脱獄犯だった…。
「テイク・シェルター」のジェフ・ニコルズ監督作。
アメリカ南部の田舎町の雰囲気がノスタルジックを醸し出し、少年の友情と成長、ほんの一時のサスペンスフルな冒険…。
あの日、あの時、あの場所で…かの名作を彷彿とさせる。
愛する女、ジュニパーの為に殺人を犯したマッド。
決して極悪人ではなく、むしろナイスガイ。
島に潜みながら、愛する女との再会を夢見る。
自身も年上の女性に想いを寄せるエリスは、マッドに共感を抱く。が…、
マッドのジュニパーへの愛は、ハッキリ言って報われない愛。それ故、無償の愛とも捉えられるが、どんな理由でも殺人を犯してしまったら狂気の愛でもある。(マッドの名はここから来てるのか…?)
そしてエリスもまた、愛の不条理を知る。
そんなエリスにマッドは愛を信じる事を教える。
様々な愛の形を目の当たりにし、少年は一歩、大人へと成長していく…。
監督がマッド役にマシュー・マコノヒーを想定していただけあって、これは彼のハマり役。
やさぐれ具合と憎めない好印象が絶妙にマッチ!
改めて、マコノヒーの演技力の高さを思い知らされる。
エリス役には、「ツリー・オブ・ライフ」でブラッド・ピットの息子を演じた、新星タイ・シェリダン。
実質彼が主役なので、恥じない繊細で素晴らしい演技を披露。
良作への出演続き、楽しみな逸材!
ジュニパーに、リース・ウィザースプーン。マッド曰わく、“最高の女”なのだが、正直好みが分かれる所…。久々にいい女にも見えたのだけれど…?
マッドの事を知り、川辺に独り住む謎の老人、サム・シェパードはさすがの存在感。
オスカー受賞、出演作が続々公開…今年はマシュー・マコノヒーyear。
その最たるは「ダラス・バイヤーズクラブ」だろうが、本作も捨てがたいほど見事!
切なく懐かしい
男どうしにしかわからない約束や友情、
愛を描いた作品。
中学生の主人公というフィルターを通して
描かれており、少しずつ大人になっていく
姿を見て、なんだか懐かしい気分に
させられ、そして自分の息子と重ね合わせ
ながら見てしまった。
そんなちょっと懐かしイイ良品と言える。
脱ぎ要員と演技巧者のハーフ&ハーフで絶妙なバランス。
良かった。
特筆すべきは主演のマシュー・マコノヒー。
単なる筋肉美を魅せる脱ぎ要員ではないことは最早周知の事実。
成功したグラビアアイドルの如く肌の露出を減らし続ける彼ですが。
役者として一皮剥け評価された事を嬉しく思う反面、若干の寂しさもあったのですが。。
本作では脱ぎ要員と演技巧者の側面がハーフ&ハーフで絶妙なバランス。
大人になりきれないマッドという微妙なバランスの登場人物を演じる上で非常に適役だった印象を受けました。
作中のマッドは日焼けして図体はデカいが、青年時代からの想い人に想いを持ち続けている。
その中身と入れ物があっていないアンバランスさが本作を牽引する大きな魅力になっていたと思います。
またタイ・シェリダン演じるエリスも良かった。
彼がマッドに協力するのは或る関係性の永続性を確かめるため。
それは彼自身の問題であり、彼の家族の問題でもあり。
周りの人間が否定、もしくは諦めを抱いている中で彼の一途な希望は眩しくもあり哀しくもあり。
序盤、川をボートで下る遊びにワクワクしていたエリスが終盤見せる顔は見物です。
少年エリスだけではなく登場人物達皆が成長する本作。
終盤に畳み掛ける盛り上がりシーンの後半部分が思った以上に盛り上がらなかったり。
フリにフッた或る人物の“凄さ”が殆ど表に出なかったり。
話の作りとして若干残念な部分がありますが、マッドとエリスの友情物語としては十分楽しめました。
オススメです。
マコノヒー川シリーズ
『真夏の引力』のようなどこか不気味な川沿いに住む人々を描いているのは何故なんだろう?またマコノヒーは二枚目というより、アブナイおじさんという感じで、その人生も恋愛も淀んだ川のように泥沼です。何故かサム・シェパードが変なお爺さんとして登場しますが、同じくグレーなのです。
『悪人』は九州の田舎に住む人々の満たされない感じを苦々しく描いていましたが、マコノヒーが出演したこの『アメリカのボートピープル』二部作も救いのない感じを描いています。
子役二人が大人たちから、結局は大切に守られて難局を乗りきっていくのは、希望を託されているような感じで、僅かに希望をほのめかして終わるというあくまで沼みたいなグレーな物語でした。
エリスはいい大人になる。いい男になる。
14歳、流れに飲まれやすいくせにツッパってみせる年頃の少年の物語。ちょっと怪しげで危険な匂いに惹かれる年頃でもある。
今では考えられないかもしれないが、家のバイクを乗り回し、手製のイカダで沼に漕ぎ出し、誰のものかわからない掘っ立て小屋を自分の基地にして遊んでいた10代前半の頃を思い出しながら観た。
マシュー・マコノヒーが演じるような男に不用意に近づくエリスやネックボーンみたいな少年がいるはずがないって思う人もいるかもしれないが、親とは違う大人が放つ怪しい匂いに寄り添っていたい気持ちは共感できる。一歩、大人の世界に踏み込んだ達成感があるのだ。
親は子に現実を教える。エリスの父親は、仕事は遊びでないこと、収入を得ることがどんなに大変なことかを説く。自分より少しでもマシな人生を送るよう願っているのだ。
けれども、この年頃の少年は冒険を好む。大人が危険と思うこともそうは感じない時期がある。
背伸びしたひと夏の経験は、ほろ苦い思いと懐かしさを伴って、その後の糧になる。
エリスはいい大人になる。きっといい男になる。
思い込みと勢いで行動する時期が少年時代の一過性のものに終わらずに歳を重ねたのがマッドだ。一途だが物事を客観的に判断できない。少年から見たら大人の男だが、酸いも甘いも知った向かいのボートハウスの老人(サム・ペキンパー)から見たら子どもと同じだ。
大人の世界に一歩踏み出した少年、大人になりきれていない男、そして老いても頼れる男。スタンダードな取り合わせだが、世代を超えた男たちの絆が川面をそよぐ風のようで心地いい。
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