「クソ生意気なガキの話。」東京難民 三遊亭大ピンチさんの映画レビュー(感想・評価)
クソ生意気なガキの話。
「東京難民」、面白いです。
本当は手放しで賞賛したいが、気になる点がないわけではないので、−0.5点とします。特に私は、主人公ほど悲惨ではないが、楽しくて安定した生活を一瞬にして失った事があるので、感情移入ができて、自分もこのような目に合うのを想像しながら見ることができた。
ちょっと気になる点は、最初はチャラチャラしていた主人公が、どこからか分からないけど、急に他人思いのイイ奴になる。ここ、序盤に不動産屋に暴言を吐くとか、歩きタバコをプカプカ蒸すとか、クソ野郎具合を見せてるし、チャラい学生時代を回想でしっかり見せてる割に、あっさりイイ人と言うか律儀な若者に変わる。ホストに勤めて人の醜い部分、学生時代は知らなかった社会の不条理を知ってしまったから心変わりしたのだろうが、もうちょっと説明が欲しいし、何より変わり様が急激すぎる。少し残念。
難民感もあまり感じない。ホストになるまでの悲惨さはすごく丁寧にリアル描かれてると思うけど、ホストになってからはただのホスト映画に成り下がってしまう。売上至上主義的な先輩方に反目して、自分のペースや流儀で使命を取るようになる。こーゆー流れって、ホストを題材にしたドラマでは定番すぎる展開だし、ここに割く時間が以上に長い。その後のホームレス生活が意外とあっさり片付けられがちなので、もう少しペース配分を考えてほしいなと思った。しかし、ホスト周りの演技はどれも素晴らしいと感じた。特に大塚千弘さんは、最初はウブな女で徐々にビッチ感を出すけど、その容姿の変化に頼らずとも表情やセリフで演技を語れる、素晴らしい女優さんだと気づかされた。あとすげー可愛いし。金子ノブアキさんも良かった。だって怖いし。主人公に散髪代と服代を渡して、「前貸だよ」的なセリフがあるけど、この一言がとても重いし重要だった、秀逸な脚本。お見事という他ない。
あとは、結構友達たちと楽しんでた風な大学生活。急に大学を辞めるという劇的な流れがあるんだから、大学時代の友人と絡むようなシーンがあれば、より主人公が悲惨で可哀想という面が強調されると思うので、そーゆーシーンが個人的には欲しかった。
細かい揚げ足取りしてすいません。
粗を挙げるより、良い部分をあげた方が多いと思うのですが、それはあえて言いません。この映画の1番素晴らしい所はドキュメンタリーのようにリアルで、単純にこの主人公がどうなってしまうのかと気になって、あっという間に2時間を駆け抜けてしまいました。現代の若者が持つ可能性の両面を考える事ができる、素晴らしい作品です。