劇場公開日 2013年10月12日

「悪い意味でアニメ版とは全く違う作風」男子高校生の日常 といぼさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0悪い意味でアニメ版とは全く違う作風

2019年8月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

私はアニメ版「男子高校生の日常」のファンで、この実写版もアニメ版のような作品を期待して視聴しました。

しかしながら、実写版はアニメ版とは全く別作品と言っても差し支えないほどに違います。どうしてもアニメ版のファンとしてはアニメと比較して観てしまいますので、期待はずれ感は否めません。アニメを観ていなかったとしても、映画として楽しんで観れたかどうかは正直疑問が残る作品でした。

以下に、私と同じようにガッカリしないために留意すべきアニメ版との違いを挙げていきます。

まずはストーリー構成の違い。
アニメは一話につき4・5個のショートストーリーが流れるオムニバス形式なのに対し、実写版は「女子高との合同文化祭をする」というゴールの定められた一本道のストーリーになっています。これは「2時間で完結させないといけない」という映画の制限があるので当然の改変だとは思いますが、せっかく一本道ストーリーを作ったのに原作ファンに寄せてなのか本筋とは関係のないアニメ版でもあったショートストーリーをところどころに差し込んでおり、物語のテンポを悪くしているように感じました。

次に脚本。
実写版は「これ役者がアドリブで言ってるのか」と思うような冗長な台詞が多いです。「男子高校生らしい中身のない会話を演出している」と言われてしまえばそれまでですが、アニメ版で実力派声優たちが見せてくれたような舌戦を期待していた自分としては残念に感じました。

最後に「リアリティ」の違い。
この違いがアニメ版との一番の違いにして私個人的に最悪の違いです。
実写版にはアニメ版にあった、「BGM」「SE」「モノローグ」「ギャグ漫画的なオーバーリアクション」がありません。それによってよりリアリティのある男子高校生日常風景が描かれています。
この違いが一番露骨に出るのはヒデノリと文学少女が出会うシーンです。アニメではヒデノリ役の声優杉田智和の名演が光る爆笑シーンなのですが、実写版ではBGMもSEもモノローグもありませんので、ほぼ無音の中で「風がさわがしいな」などの台詞のみがポツリポツリと呟かれます。ヒデノリは何故か目を泳がせながら台詞を言い、最終的には逃げるように去っていきます。アニメ版を観たことがある人なら分かると思いますが、このシーンはヒデノリが文学少女と中二的な台詞の応酬を繰り広げながらも内面ではテンパっているという描写が面白いのです。実写版では内心のテンパりを表すモノローグの代わりにヒデノリが挙動不審な動きをするので、ヒデノリが「挙動不審に中二病台詞を喋る頭おかしい人」にしか見えない本当に意味不明なシーンになります。

そういう演出を観て「リアリティにこだわってるのかな」と思いきや、男子高校生は女子を目の前にすると挙動不審に目が泳ぐ奴しか出て来ないし、女子高生は男子に嫌悪感を抱いて悪態をつく奴しか出て来ない。ステレオタイプで偏見に満ちたキャラクターの描き方をしています。男子高校生の日常という作品は男子なら誰しも共感できる「あるある」を笑いにする作品であるにも関わらず、全く共感できないキャラクターの描き方をしてしまっているのです。

要らんところでリアリティをもたせ、必要なところでリアリティを捨てる、アニメ版のファンとして、正直ここが一番ガッカリさせられました。

ただ、俳優陣の演技はとても良かったです。主演の菅田将暉くんは言わずもがな、女子高生役として出て来た山本美月さんのギャルの演技は本当に良かったです。また、東京03の角田さんが意外に違和感なくて演技も上手くて驚きました。

といぼ:レビューが長い人