「芝居と演技と時々ドキュメンタリー風」親密さ puccinoさんの映画レビュー(感想・評価)
芝居と演技と時々ドキュメンタリー風
2013年公開の映画。
「親密」とは互いの交際の深いこと。きわめて仲のよいこと。また、そのさま。
俳優養成の専門学校の演技コース修了作品としてスタートした企画から生まれた255分の長編作品。新作舞台「親密さ」を共同演出する男女の関係性を描いた劇映画の前半部分と、実際の舞台上演を記録した後半部分の2部構成。ドキュメンタリーのようでそうではない。最後しっかりオチもある。
4時間余りの疲れを吹き飛ばすアオハルっぽい終わりかた。なかなかどうして参りました。
前半の劇映画の芝居と、後半の狭い空間で繰り広げられる舞台演劇のリアルな空気感のギャップに、観る側のメンタル調整に戸惑わされる。
何を本心として受け止めればよいのか?いやそもそも全部演技なのは分かってはいるけれど。
「ハッピーアワー」「ドライブ・マイ・カー」「偶然と想像」と一連の濱口竜介監督の作品を思い返すと「コミニュケーション能力」って一体なんなんだろう…って嫌でも考えてしまう。社会でも会社でも学校でも家の中でもコミニュケーション能力が常に試されているような現実社会で、何か問題が起こればコミニュケーション能力が適切ではなかったと結論付けられる。意思疎通を上手に図るためには、話をよく聞き相手の立場になって否定せずに自分の意見も押し付けない。冷静に言葉を選んで論理的思考で経緯とその場の空気を汲み取って感情を取り乱さず問題があれば解決策を模索しながら会話を進めて行く。常にそんなことを心がけて言葉にしないといけない。決して大声で怒鳴ってはいけない。どんな状況でも冷静に感情を出さずに適切な言葉で相手の心理を確認し合うのである。それはまるで「Ai人間になれ」とでも言っているかのようだ。
私たちは人間。相手の心に届いて響いてそしてもちろん愛もあるはず。心の奥底から湧き出るエネルギーが本心となって言葉になるんだ。なのに伝えたい感情をうかつに言えない。相手が誰であれ言葉を選んで感情を抑えて冷静を保つなんてみんな出来ないくせに平静を保とうとするから、みんな知らないうちにストレスを溜め込んでしまうからだから顔に出てしまう。言葉の節々にも出てしまう。あなたが気づいてないだけ。ちゃんと見られてるよ…って。
ふとした言動で相手を疑ったり不信に感じたり。端的に質問したいのに遠回しに確認したり。問い詰めたいけど明るく振る舞ったり。誰にでも経験のある日常の小さなしこりの積み重ね。できるなら滞りなく平穏にお互いの関係性を保ちたい。ほんと生きることは疲れる。でも本心をなんでも言い合える、いや言わせられる関係の存在は必要なんだなぁ・・・って、いないけど。