劇場公開日 2013年10月26日

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コールド・ウォー 香港警察 二つの正義 : 映画評論・批評

2013年10月22日更新

2013年10月26日よりシネマート新宿ほかにてロードショー

香港警察の組織構造とその闇を濃厚な活劇として見せる群像サスペンス

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インファナル・アフェア」シリーズ以降、香港では数多くの警察映画が作られてきたが、これほど多様な役職の警察官が入り乱れる作品は珍しい。行動班のボス、リー(レオン・カーファイ)、管理班を率いるラウ(アーロン・クォック)という2人の副長官を主人公に、それぞれの腹心やIT担当、広報官、緊急部隊隊員まで大勢のキャラクターが登場。まさにこれは香港警察本部の組織構造とその内幕を描いた群像サスペンスなのだ。

繁華街での爆破テロと警官5人の拉致事件が同時発生。折しも香港警察のトップたる長官は海外出張中で、タカ派のリーが捜査の指揮を執る。その私情が交じった強引な捜査方針に異を唱える穏健派のラウとのパワーゲームを軸にした物語は、警察外部の汚職捜査機関が割り込んでくる中盤の急旋回で観る者を驚かせる。そのテロ撲滅から汚職調査への意外な転調が組織内のどす黒い闇を覗かせ、主人公たちの警察官としての誇りが試される骨太なドラマへ発展していく。

ガラス張りのタワービル内にある警察オフィスのスタイリッシュなデザインといい、政府保安局局長(アンディ・ラウ)が国際金融都市、香港の治安の良さをしきりにアピールするエピソードといい、これは極めて現代的な警察映画だ。ストーリー展開が駆け足すぎて重厚感に欠ける印象は否めないが、登場人物の感情的な熱さと洗練されたビジュアルのクールさが絶妙にブレンドされ、鑑賞後には見せ場の数以上に濃厚な“活劇”を堪能した心地よい疲労感に浸れる。劇中には抜かりなくパート2への布石も打たれており、その堂々たる仕上がりに舌を巻かざるをえない。

高橋諭治

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