「映画化は他国に任せて貴方は原作をやりなさい」オールド・ボーイ 13番目の猿さんの映画レビュー(感想・評価)
映画化は他国に任せて貴方は原作をやりなさい
カンヌで審査員特別賞を受賞した作品なので既に映画ファンからは周知されている作品をなぜわざわざリメイクする必要があったのか。ならばせめてハリウッドお得意の脚本術で、救いようのなかったあの結末を何とかハッピーエンドに持っていく力技を期待したのだがそれも当てが外れてしまった。
留意しなければならないのは元の日本の漫画は荒唐無稽なものだということだ。それがパク・チャヌク監督と主演のチェ・ミンシクのバイタリティと存在感によって傑作になっていた韓国版だったが今作では改変したところとしなかったところがことごとく裏目に出ているように思われて仕方ない。
裏目に出た描写の例を挙げるとすれば、
・監禁期間/日本版10年→韓国版15年→ハリウッド版20年
映画版は両方とも主人公の娘がキーとなるのでその成長を考慮しての監禁年数なのだろうが、どうみても主演のジョシュ・ブローリンは監禁前と後では年齢が代わっていないように見える。低く見積もっても30代後半の彼なら監禁後はもう還暦前にならなければならないはずなのにしっかりとムキムキマッチョなのである。これでは20年の重みがどうにも感じられない。
・使用武器
韓国版ではダメージの痛々しさを演出するうえで存分に力を発揮していた金槌だったが、ハリウッド版でそれをやられても銃社会のアメリカでギャング相手にそんなの通用するわけないだろうという突込み待ちのツールにしかならない。金槌にそこまでこだわる必要があったのか。
・敵の攻撃手段
日本版と韓国版では催眠術が使用された。韓国版の主人公の娘との過ちはこの催眠術があってこそのものだったのだが、ハリウッド版でそれをやるには反則だと思われたのか、しかしそのせいで敵はとにかくお金にまかせて主人公を陥れるというもっと反則じみた手段で主人公を攻撃することになる。
・監禁の理由
抽象的な日本版の理由はさておき、韓国版では黒幕の姉弟の悲恋の結末の原因を主人公が作ったというやるせない理由があったが、ハリウッド版では黒幕の家庭崩壊のきっかけを主人公が作ったものの、そもそもその家庭が結構いかれていて、そのいかれた黒幕の復讐が成就するというさらにやるせない結末となってしまっている。
上記された箇所以外にもイマイチな点は散見されるので、おそらく劣化版のリメイクとして記憶されるであろう本作だが、シャールト・コプリーの怪演と、エリザベス・オルセン(フルハウスのオルセン姉妹の妹なんですね)のエロい聖母、ジョシュ・ブローリンの時系列とは逆に作ったのであろう肉体改造術は見どころだといってもいいだろう。