「未来は辛辣で温かい」劇場版「空の境界」未来福音 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
未来は辛辣で温かい
万物の死を見る事が出来る“直視の魔眼”を持つ少女、両儀式が怪事件と対する姿を描いた、奈須きのこ原作の伝奇ミステリー・アニメ。
2007年から2010年にかけて、それぞれ短編・中編・長編で全八章が公開され、かなりハマっただけに、待望の新作だった。
勿論地元では公開されず、レンタル待ちだったが、いざレンタルされたら近くのレンタル店では一枚しか置いておらず(泣)、ようやくようやく、見る事が出来た。
98年8月、式は、未来を予見出来る能力を持つ爆弾魔・倉密メルカを追っていたが、爆発に巻き込まれてしまう。同じ頃、式の同級生・黒桐幹也も、未来を予見出来る瀬尾静音から自分の能力の悩みを打ち明けられ…。
98年8月なので、時系列的には少し前に遡る。
全八章を時系列にすると、二→四→三→一→五→六→七→八となり、今作の出来事は、三章と一章の間になる。
お察しの通り、一見さんお断り、である。
話的にはダーク・ファンタジーもしくはミステリー&ホラーとして堪能出来るのだが、とにかく背景や設定が複雑。加えて、登場人物たちの台詞は知的なもので余計小難しい。
見続けている者でも全てを理解するのは困難だが、それでも、妖しくも美しい世界観、好クオリティの映像に魅了されてしまう。
サスペンス風の式のエピソードと青春ラブストーリー風の幹也のエピソードが交錯して進み、後半はある人物の12年後のエピソード(思いがけぬ人物も登場!)と、さらに遡って96年の式という構成。
焦点は、式と幹也がそれぞれ出会う未来視能力者に絞られる。
似た能力を持ちながら、片やその力に溺れ、片やその力に悩み苦しむ。
対極的だが、それぞれの対峙や出会いによって、大きく変化する。
結局は未来視なんてただの予測にしか過ぎない。
それに固執するか、それをどう受け止めるか。
未来は辛辣でありながら、温かい。それは二人の未来視能力者も、そして式も。
まさかこのシリーズで、しんみりとした感動を味わえるとは!
レンタルして来てもう二度見ているが、まだまだ把握出来てない部分もある。
またじっくり見よう。