「科学的だがじんわり魂に沁みる傑作SF大作。(2025.6.23大幅に加筆修正)」インターステラー image_taroさんの映画レビュー(感想・評価)
科学的だがじんわり魂に沁みる傑作SF大作。(2025.6.23大幅に加筆修正)
実に壮大なSFアドベンチャーであるのにもかかわらず、アドベンチャー的なワクワク感は実に乏しく、滅亡に向かう人類が苛まれる不安感が充満し、メランコリックな空気感に彩られた作品だ。にもかかわらず、この作品に強く惹かれるのは、メインキャラクター達の実に人間的な感情の動きが豊かに伝わってくるし、不安は全て拭いきれないとしても、最後にちゃんと希望を感じさせてくれるからだ。
観終わって思った。こんな内容なら、ああいうありきたりな予告編しか作りようがなかっただろうが、まったくこの作品の魅力を伝えられていないな、と。特に、ブラックホールに呑み込まれた後の予想だにしない展開(でも、ちゃんと伏線は張られている)と、とんでもないビジュアルは、強烈に胸に刻まれる。でも、予告であの展開を匂わせたらおしまいだから、ああするしかなかっただろう。
人類が新天地を求めて宇宙に飛び出す作品はこれまでにもあったけれど、これはそれらの全てを凌駕してみせた。ここで評価しておきたいのは、お金をかけた大作のSF映画にはなかなかみられない、ワンカットをじっくりと観客に染み込んでいくように作っているその作り方である。ひとつひとつのシーンが心を打つし、エモーショナルに感じられる。
そして、何よりも素晴らしいラストシーン。『ダークナイト』や『インセプション』の時にもノーラン監督はラストシーンの余韻の響かせ方が天才的に上手いと感じたのを覚えているが、この作品でも最後のシーンのあとに広がりを感じさせ、不安と希望が綯い交ぜになった深い余韻を響かせる。とんでもなく素晴らしい出来映えだ。