「淳吾と花の関係性を時間経過と共に理解する作品。」私の男 Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)
淳吾と花の関係性を時間経過と共に理解する作品。
面白かった。
確かに面白かったし、主演二人の怖い程の凄みにはグッときました。
が、色々な前評判や予告等で期待パッンパンに行った結果。
若干の残念感が、という印象になってしまいました。
特筆すべきは主演二人。
作中に登場人物が少数であるため主演の二人が話を引っ張っていきます。
浅野忠信、二階堂ふみ共に良かった。
序盤の淳吾の不可解さ、怪しさ。
底の知れない淳吾が花を引き取る場面はゾワゾワしたものを感じます。
本当にこの娘は“花”なのか、と想いが過る不信感すら。
しかし時間の経過と共に底が知れなくなるのは花。
幼少期の自身の力では開けられないペットボトルを抱きしめる姿から始まり。
中学生の時点で未熟さと同時に淫靡さ、そして貪欲さが滲みでています。
淳吾以外に然程興味を持っていない点も異質感が。
二人の関係が明らかになるにつれて、花の異質感が高まっていきます。
そして時間が経つにつれて覚える彼等の関係性の違和感。
これは対等の関係からなる愛なのか。
大人が子供を絡め取り籠絡した関係性なのか。
いや、明らかに異なる関係性が時間を掛けて綿密に醸成されており。
この関係性に溺れているのは、そして溺れさせているのは誰か。
という点でゾッとしてきます。
違和感が確信に変わるのは北海道紋別ではない土地での二人。
或ることを切欠に二人の関係性に変化が…生じない点にハッとさせられます。
そこで見えてくる花の共通する、変わらない立ち位置。
以降の展開はその確認作業であり蛇足と言えば蛇足の展開に。
しかし随所で見られる淳吾の醜い感情は淳吾側の“正しい反応”として観ていて面白かったです。
終盤まで期待を裏切らない流れになっていました。
惜しむらくは見せ場が弱いこと。
北海道紋別での淳吾と花の自室での行為の演出。
そして中盤の見せ場である流氷での遣り取り。
正直、あんまりピンとこない場面になっていました。
特に流氷の台詞応酬の陳腐さ、結末の画面の格好悪さには失望しました。
藤竜也が演じる大塩の言動が鬱陶しく感じたのは自分だけでしょうか。
淳吾と花の関係性を時間経過と共に理解する本作。
『モスクワ国際映画祭コンペティション部門』云々が更なる期待感を煽る状況になっていますが。
フラットな状況で鑑賞すれば十分楽しめると思います。
オススメです。