「ドイツ版火垂るの墓」さよなら、アドルフ 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
ドイツ版火垂るの墓
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第二次世界大戦のドイツ敗戦によりナチスの子弟たちを訪れる運命を描いたもの。両親が逮捕、拘留されて、姉弟5人だけで放り出されたため、遠い祖母の家まで苦労してたどり着くという話である。
原作はイギリスのベストセラーだというが、映画を見る限りでは、ナチスがどうしたヒットラーがこうしたという話はあまり出てこず、子供たちだけで生き延びていく苦労話がメインとなっており、いわばドイツ版火垂るの墓といった趣だ。
主人公の少女が思春期で、男たちから性的に求められるのを切り抜けていく点で若干異なるが、いずれにしろ国家、社会秩序が崩壊して、エゴむき出しの大人たちにもまれていく一種の戦災孤児たちの過酷さはきちんと描かれていると思う。
最後には無事祖母の家に到着してめでたしめでたしになった…と思いきや、ラストシーンで突然、今でもナチを信奉し、旧来の礼儀にこだわる祖母に少女が腹を立て、父母やナチの記憶につながる玩具を破壊してしまう。
恐らく原作では相応の分量で書かれていたナチ批判をかなり割愛して映画化したので、このように唐突な幕切れとなったのだろう。
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