劇場公開日 2014年4月19日

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「個人の和睦」レイルウェイ 運命の旅路 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0個人の和睦

2014年5月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

ミッドウェイ海戦に負け、インド洋への海上ルートが閉ざされた日本が物資輸送のため着工したのがタイとビルマを結ぶ泰緬鉄道。地形的に困難を極め過酷な労働を強いられたため、後に英語圏からは「死の鉄道」と呼ばれる。
この鉄道建設を扱った映画で有名なのが「戦場にかける橋」だ。
「戦場にかける橋」は娯楽作品としても名作だが、この「レイルウェイ 運命の旅路」は中々に見るのが辛い映画だ。「戦場にかける橋」もニコルソンと斎藤という個人の対峙があるが、あの作品は国と国の意地の張り合いのようなものが根底にある。それに対し、本作は完全に個人の確執を扱った作品だ。戦争が遺す傷跡は国家よりも個人を蝕むという観点から作られている。

日本兵による捕虜に対する酷い仕打ちは目を覆うものがあるが、戦争とはそういうものではないだろうか。当時、捕虜の待遇を保障するジュネーヴ条約に日本は加盟していなかった。だから捕虜に対し残虐な行為をしてもいいということにはならない。また、協定を結んでいるからといって、戦時下に敵国の兵に対して紳士たる振る舞いができるのか、それも甚だ疑問である。作戦本部の机上で兵を捨て駒のごとく動かしている上層部と違い、戦地の人間は死ぬか生きるかの瀬戸際で行動している。戦争は人を狂わせる。人を狂気に走らせるのが戦争だ。

その狂気の犠牲になった一人の英国人を通して、戦争の残虐性を訴え、心と身体に遺された傷の癒し処が見つからない切なさが描かれていく。
元英国兵エリックが、背負った傷の多くに関わった元日本兵・永瀬と再開し、思いの丈をぶつけるシーンは見ていて切なくなる。
そして、最後は同じ時代を生き抜いた者通しとして交流する姿にほっとする。やっと個人として和睦が成立した瞬間に立ち会った思いだ。

真実を知ること、真実を受け止めることは大事だ。その上で、今後も日英や日豪の関係が一層良くなれば、過去の過ちで失われた命も少しは報われる。
「ごめんなさい」という言葉がどれだけ大事か、この作品が教えてくれる。「ごめんなさい」が言える関係こそが未来を切り開く。
だが、一旦話し合いで定めた協定や条約を破断にし、「ごめんなさい」を言おうものなら、執拗に保障させようとする外交を繰り返す一部の国に対しては素直に「ごめんなさい、悪かったね」とは言えないのだ。こうした国が欲しているのは“謝罪の気持ち”なのか、それとも単に“カネ”か、よく分からない。

マスター@だんだん