「予想よりはだいぶ良かった ※重大なネタバレはなし」スノーピアサー alalaさんの映画レビュー(感想・評価)
予想よりはだいぶ良かった ※重大なネタバレはなし
Gyaoでやってたので、またクソみたいな映画見せられるかと思ってたんですが(無料で見てるくせに酷い言い草)、予想よりずっと良かった。ポン・ジュノが『パラサイト 半地下の家族』で受賞したことを記念して、Gyaoでポン監督作品を一挙公開中とのこと。
自分は『パラサイト』よりこっちの方が好きかも。あちらの方が出来が良いのはわかるんですが、ストーリーとしてはどうもねぇ。自分がアグレッシブな映画が好きなせいもあるでしょうが…
自分はクリス・エヴァンスの演技が結構好きなんですが、本作では特に良い演技してまして、見て良かったです。ただ設定的に、主演クリスは正直ミスキャストだったと思うんだよなぁ。
本編は1分20秒くらいから。それまでは黒地に関係者の名前がつらつら出てくるだけです。1分飛ばしても黒地だったので、2分飛ばしたら始まっててヽ(`Д´#)ノ ムキー!!ってなったので、最初からちょっと見る気は失せてた。のに最後まで見たから、面白かったんだと思います。なお、途中で止めて何度もお茶飲みに行ったりはしました。
あらすじ:
温暖化が進んだ2014年。これ以上の気温上昇は危険と判断した先進国は、7年にも及ぶ大論争の末、環境保護団体や途上国の反対を押し切り人口冷却物質CW-7を一斉に大気圏上層部に散布。ところが散布直後、地上は一気に凍り付き生物はほぼ絶滅、走り続ける列車スノー・ピアサーの中以外はとても生物が住める環境ではなくなってしまった。列車に乗り込んで生き残った人々は、抽選で決められた格差を守ることを強要される。先頭車両が、列車の所有者であり列車を永久に走らせるためのエンジンを管理するウィルフォード個人の部屋、その後ろが富裕層の車両、給水車両、貧民の食べるプロテインバーを作る車両、そして最後尾には貧しい人々が詰め込まれ、生きるか死ぬかの毎日を強いられていた。そんな生活を脱するため革命を企てたカーティスは、仲間達と共謀してウィルフォードを倒し、エンジンをジャックすることで格差を無くそうと試みるが…
CW-7、全世界で7年にも及ぶ大論争の末撒いたのに、散布直後に「地球は凍り 生物は絶滅した」って字幕出てきて思わず鼻水噴き出すかと思いました。7年話し合ってこの失態ヤバすぎんだろww
7年ですよ!?専門家だって当然集めたでしょうし、7年もあれば研究も色々進んだでしょうし、全世界の頭脳集めて7年話し合いですよ??1時間に1単語しか喋れない呪いにでもかかってたんか???
それに線路も、整備してないのにヒビ割れもなく、落石も凍りもせず7年間も列車走り続けてるって…どうなっとんねん。
プロテインバーしか食うもんない貧民達も、めちゃくちゃ元気そうです。痩せた人もいるにはいるけど、絵に描いたような健康体の方々が多くて笑ってしまった。カーティスなんか、もはやそこらの一般人よりよっぽど栄養摂取抜かりなさそうな体型してるし。
ウィルフォードも「好きなだけ泣くといい」とか言いつつ10秒もしないうちに戻ってきて、いや好きなだけ泣かせろよwwとシリアスなシーンなのに笑ってしまいました。お前の「好きなだけ」って10秒もないのかよ…話しかけてくんじゃねーよ泣いてんだろ今…
とまぁ、そんな感じのめちゃくちゃユルい突っ込みどころは色々あるんですが、伝えたいことを伝えるために作ったような作品なので、細かいところは気にしないでおきましょう…あれ、この台詞『パラサイト』の時も書いたような…
原作はフランスの"Le Transperceneige"というグラフィックノベルだそう。日本でいうライトノベルみたいなもんなのかな。ラノベほど若者向けっぽいチャラついた感じはありませんが、文学作品というほどでもない感じ。
監督がポン・ジュノとはいえ根っこは原作の流れを汲んでるでしょうが、書き換えがどのくらいなされたのか…脚本はポン・ジュノと、原作者とは別の人、2人で担当したようですが。
原作の主人公はヒョロガリ設定だったそうで、話の内容的にもその方が圧倒的に説得力あったのにと感じるシーンがちらほら。何で主演クリスにした????
本作が2013年で、『アベンジャーズ』(2012)の翌年公開なので、どーーーーしても今流行りの俳優使いたい、でも設定がヒョロガリ…あっ、極寒の設定だし厚着させちゃえ☆っていう安易な考えのせいで、ムッキムキの無敵感漂うマッチョが何か割とチョロく先頭車両まで行ったなって感じの話になってました。そもそも顔がイカつすぎて厚着させたから何だっつーんだよ!!面構えがもう100万馬力だよ!!!!
行けるでしょうね、貴方なら。って割と白けた感情が湧いてきます。卑怯なヒョロガリ君が何やかんやあって、ラストでそれやったら自分がヤバいとわかってるのに勇気を出して他人のために動く!ってストーリーだから感動するんでないの?
監督は最初クリスの起用に消極的だったそうですが(見た目的に)、繊細な演技ができるとのことで踏み切ったそう。そりゃあの見た目じゃ起用に消極的にもなるわ。
最初ヒョロガリ設定だったと言われなきゃ全然わからないし、むしろ「外界では軍人でした」「一般人の首なんか素手でへし折れます」って設定でもおかしくないくらいの強面。弱音吐いても何かゴリラ(?)。
だから~~~、俳優の持つ雰囲気って大事だよねって『コラテラル』のレビューでも書いたじゃ~~~ん!!!(知らんがな)
クリスのために多分どっか書き換えたんじゃないかと思うくらいには良い演技してたんですが、如何せん「ヒョロガリ設定だからこそ映えるシーン」がそこかしこにあって、見てる最中「このシーン、ヒョロガリが演じてたらしっくりきたんだろうな、泣けただろうな…」と考えてしまい、元がヒョロガリ設定だったと知ってると余計ゴリマッチョで台無しやんけと感じることしばしば。
しかし『PUSH 光と闇の能力者』や『ギフテッド』の時も思ったけど、クリスは本当に子供好きなんですね。子供相手に話してる時、完全に目元とろけてる…笑
そして子供関連の悲しいストーリーに弱いのか、これマジ泣きでは…と思われるシーンも。鼻水拭いたろか?
『ギフテッド』の時もそうでしたが、子供が泣いてたり、子を想う親、みたいな話に極端に弱い模様。感激屋なんですかね。凄いロマンチストですぐ泣くと本人も言ってましたが。
作中で子供はそこまで酷い仕打ちされてるシーンはありません…いや、充分酷いけど、グロくはない。でも、現実だったらこの程度じゃ済まないよなーと。プロテインバーさえあれば、最後尾だって秩序保ってますからね。プロテインバーだって1人1本なのに、パクるために人殺したりもしないし、レイプもないし、普通に子供産んでるし(どこで子作りしたんや…)想像よりびっくりするほど穏やか。
本作はPG12ですが、食人エピソードがあるので多分その辺かな。「この監督は大体どの作品にも生々しいエロが入っててウンザリする」とどっかのレビューで見かけたので本作も…と覚悟してたんですが、本作にはエロは一瞬もありませんでした。精々「最後に女抱いたのいつ?」みたいな下世話な話が出てくる程度。PG12じゃこんなもん…なのか?
あと、殆どの人が最もヤベーと思うシーンは38~39分辺りの「プロテインバー制作秘話」。大量のGキBリが(多分)出てきます。自分はヤベー臭いを感じ咄嗟に目を背けたんですが、最後尾の人々が食ってるプロテインバーの原料わかるかな?のコーナー☆で、カーティスが窯の蓋を開けると……ウジャジャジャジャジャジャジャ…って音がしてたので、多分尋常じゃない量のGが…ウワァァァァァァΣ(゚д゚lll)
いやぁ、もっかい見返す度胸はないですね。カーティスがウハァッ!!?って飛び退いて口抑えてたけど、そりゃそうなるわ。むしろ自分だったら吐くと思う。流石にCGだと思いますが…ていうかそうであってほしい。
ところでポン監督だから韓国俳優いっぱい出てくるかと思いきや、予想より全然でした。まぁスノー・ピアサーが「ノアの箱舟」をモチーフとした列車なんで、色んな人種・国籍で集めたんでしょう。その割に黒人はほぼおらんが。韓国人親子が重要な役ではありますが、それだけ。
ただ、韓国人親子の父が英語喋れないので通訳機を使うんですが、これが出てくると途端に場の空気がマターリ…何でわざわざ英語喋れない設定にしたんだろ。原作もそうなのか?
俳優自身も英語は得意でないのか、ネイティブと英語で台本読み合わせするのは難しい、緊張したとインタビューで答えてました。
ちなみに父親役は『パラサイト 半地下の家族』で半地下の父親役だったソン・ガンホ。雰囲気は全然違います。
こうして比べるのは悪いと思いつつ、ハリウッドでじゃんじゃん出てる人や何度も主役張る人ってやっぱ上手いんだなぁと。クリスが目を引く存在感を放っていて、実はすんごいキャラの濃い富裕層役でティルダ・スウィントンも出てるんですが、こちらもふざけてるんだけどなかなかの存在感なんですよね。
で、ソン・ガンホは韓国ではかなり有名だと思うんですが、こちらは重要な役どころにも関わらず、あまり印象に残りませんでした。クリスとソンが話してるシーン、クリスは凄く良い演技してるんですが、ソンが…温度差すげーよ?どうした?笑
やっぱクリスの演技、個人的にはうまいと思うんですけどねぇ。世間の評価はあまり芳しくないですね。前もどっかで書いたけど。
あとは、前方車両の連中は煌びやかな格好してるんですが、後方は薄汚れた顔、服の人しかいなくなる上とにかく画面が暗いので、そのせいもあるかも。暗い色の服着て薄汚れた顔してても、クリスは瞳が目立つんですよね。これで髪も瞳も茶や黒だと、本当に目立たないと思います。有色人種はやっぱハリウッドでは損なのかなぁ…
撮り方はやはり『パラサイト 半地下の家族』の雰囲気を感じます。同じ監督だからそりゃあねって話なんですが、見せ方に結構個性が出るもんですね。今まであまり意識したことなかったんですが、「あーこないだ見たな」と思うくらいには同じ雰囲気を感じました。
否定的な意見の多いラストは、キリスト教圏の人々的にはアダムとイブのつもりなのかなと。
温暖化の被害者の象徴として、また人間も頑張れば生き抜けるって意味で白熊を出したみたいだけど、どう考えても世間といったら列車の中しか知らん、Gプロテインバー以外の食事も知らん子供だけじゃ生き抜けないでしょうね。残念でした。バッドエンドです。
ウダウダ語りましたが、序盤の「CW-7撒いたら氷河期がきて殆どの生物が絶滅した」っていう命懸けのコントが面白すぎて、ここが一番記憶に焼き付いてます。
格差は富裕層が良い生活し過ぎてて、もうちょい貧富の差フラットにできたろとしか言いようがない。知恵を出し合えば皆がそこそこの生活できそうな、割と良い機能や道具も揃ってるので、フラットにしても結局奪い合うほどの貧乏にもならなそうというか。貧民連中だけであれだけ賢いのが揃ってるなら、皆で仲良くやってれば全員で安全に外に出る案も出ただろうし、何であんなことになるのか…
「所詮自分が良い生活するためなら他人を犠牲にするのが人間なんだー!」って話にしたかったのか知らんが、それが本質なら人類とっくに死に絶えてると思いますけど。
もちろんこれは列車内の限られた人数だから言えることで、現実はそう簡単じゃない!それを象徴する映画なんだから細かいとこ突っ込むなよ!列車を世界の縮図だと思って見ろよ!ということなんでしょうが。
あと真面目な顔して見てたのに「へっ?」と思ったのは、謎の魚踏んでカーティスがつるんっ!と見事な横滑り&転倒を披露するとこ。笑うとこなのか?アレ…目が点になりました。
これ笑うとこなのかな、とちょいちょい半端な笑い所がありますが、Gのシーンさえ避けられれば一度は見てみてはと勧められる作品。