「一粒で5度美味しい!」SHORT PEACE 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
一粒で5度美味しい!
大友克洋ら5人のクリエイターによるオムニバス・アニメ。
それぞれ独自の世界観・表現法で、“日本”を描く。
「九十九」(監督・森田修平)
嵐の山中、道に迷った男は小さな祠で一夜を過ごそうとする。そんな男の前に、人に捨てられた傘や着物などが物の怪になって現れ…。
本年度アカデミー賞短編アニメ映画賞にノミネートされた注目作。
古くなった物に霊魂が宿る付喪神という日本古来の題材ながら、キャラデザインは3DCGで表現。古きと新しきが絶妙に融合した世界観を構築。
物の怪は物を粗末に扱う人間への風刺、また物への感謝も忘れずに描く。
「火要鎮」(監督・大友克洋)
商家の娘お岩と幼なじみの火消しの青年・松吉。ある時お岩に縁談の話が舞い込むが、一目松吉に会いたお岩は…。
江戸を舞台にした悲恋物語。
画面上下に帯が入り、まるで絵巻のよう。後半の見せ場となる大火事シーンはまるで実写のよう。10分強の尺ながら、大友克洋の手腕が光る。
燃え上がる恋の炎。しかし、燃えすぎた炎は…。
「GAMBO」(監督・安藤裕章)
空から飛来した鬼の暴虐に恐れおののく戦国時代末期のある村。幼い娘は人語を理解する白熊に助けを求める…。
華麗な映像表現の前二作から一転、血みどろのバイオレンスが強烈な一編。
鬼と白熊の死闘が勿論見せ場だが、白熊と娘が出会うシーンも秀逸。娘の祈りとそれに応えた守り神のような白熊を、柔らかなタッチで表現。その分、後半の激しさと残虐さが際立つ。
キャラデザインを「エヴァ」の貞本義行、原案を「鮫肌男と桃尻女」の石井克人が担当。
「武器よさらば」(監督・カトキハジメ)
近未来の東京。廃墟と化した都市を訪れた小隊は、戦車型無人兵器の処理に失敗。激しい銃撃戦になる。
大友克洋の同名漫画が原作の近未来SF作。「AKIRA」「攻殻機動隊」の流れを汲むジャパニメーションと見れば、これも日本的。
キャラクターが装着する“プロテクションスーツ”や戦車型無人兵器など、登場するメカ描写が見事。「ガンダム」シリーズでメカデザインを担当していた監督のこだわり爆発。
映像も音響もリアルに表現され、まるで気分はSF版「ハート・ロッカー」!?
森本晃司によるオープニングアニメーションも忘れてはいけない。
少女が体験する不思議な旅を幻想的に描き、これから始まる4つの世界へ誘ってくれる。
一粒で5度美味しい!
世界トップクラスと言われる日本アニメの力。