「人生まだまだ。」くじけないで ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
人生まだまだ。
柴田トヨさんの詩集は何篇足らずしか読んでいないが、
当時98歳のトヨさんに「くじけないで」なんて言われたら、
とてもこの歳でくじけてなどいられない。
彼女がどんな人生を過ごしてきたのか。
書き溜めた詩を息子の薦めで刊行できたことは素晴らしい。
何かの功労者というわけではないし、変わった人生を歩んだ
わけではないトヨさんの、語りかける口調はいつでも優しい。
普通に生きているだけで、様々な歴史の波を体験した時代。
夫の死から降順に過去を回想していく描き方をしている。
現在を起点に考えると、過去の幸せと苦労が背中合わせに
映され、優雅な口調のトヨさんが「おしん」とダブってくる。
そしてあの時代に読み書きができるということは、相応の
教育を受けることができた家柄の人々ということを証明し、
その文才は(モノになるならないは別として)彼女の息子に
受け継がれた…ということになる。
もちろん仕事としてそれがモノになればいうことないが、
人生そうは巧くいかない。大事に大事に育てたはずの
息子の健一は定職に就かず、ウサギ小屋の掃除と競輪通い。
デキのいい嫁(蘭ちゃん)の気苦労はかなりのものだが、
それでも健一を見捨てない、母親と嫁の優しさは共通する。
バカがつくほど愛おしいとはこういうことか~なんて
私にとっては誰になるんだろう?と思いながら見つめていた。
だけどどんなに真面目に働いても、
いまのご時世、あんな風にクビを切られちゃたまらない。
労働者を育てない会社に未来なんてくるのかよ、と思う。
でもどうか、くじけないで。
「夢は 平等に見られるのよ」
「私 辛いことが あったけれど 生きていてよかった」
本当に、本当にその通りです。何があろうと生きてて何歩。
(しかし金八先生はどの役をやっても説得力があるわねぇ^^;)