劇場公開日 2014年4月1日

  • 予告編を見る

サンブンノイチ : インタビュー

2014年3月28日更新
画像1

品川ヒロシ監督×藤原竜也 映画へのたぎる思いぶつけた「サンブンノイチ」

自著を映画化した「ドロップ」「漫才ギャング」で立て続けに興行的な成功を収めた品川ヒロシ監督が、最新作「サンブンノイチ」(木下半太原作)で初めて他者の著書の映画化に挑戦。主演を務める藤原竜也をはじめ、前2作に劣らぬ豪華キャストが顔をそろえるなか、映画監督としてレベルアップした手腕を発揮している。「藤原竜也という役者さんに、絶大な信用があった」(品川監督)、「自分にとってまったく新しい挑戦で、俳優として発見だらけでした」(藤原)と手応え十分の初タッグ作には、それぞれが胸に抱く映画へのたぎる思いがぶつけられている。(取材・文・写真/内田涼)

画像2

映画は人生の一発逆転をかけて銀行強盗を成功させた3人の男――キャバクラ「ハニーバニー」店長のシュウ、ボーイのコジ、常連客の健さん――が、手にしたはずの大金を“サンブンノイチ”に山分けするはずが、各々が自分の取り分を少しでも増やそうと駆け引きを始めるクライムアクション。

シュウを演じる藤原を軸に、コジ役の田中聖、健さんに扮する「ブラックマヨネーズ」の小杉竜一という個性も業種もバラバラな3人が繰り広げる、いわば“異種格闘技”的アンサンブルが作品のスパイスになっている。藤原は「業種の違いというよりは、表現のタイプがまったく違う俳優が3人集まった印象ですね。そこが面白いし、きっと品川監督の意図もあったんじゃないかなと思いました」と心境を明かす。

藤原がいう“意図”について品川監督は「明確に何かあったわけじゃないんですが、3人が互いに刺激し合うことで、いいバランスが生まれればと思ったのは事実。もちろん、藤原くんや田中くんは芝居の軸がしっかりしているし、小杉さんも藤原くんと一緒にいれば『お芝居ってこうやるんだ。格好いいところは、全力で決めよう』って自然と理解してくれた」と語る。

画像3

大切になるのは、3人が交わす会話のテンポと駆け引きの緊張感。それだけにリハーサルは入念に行われたといい「互いに意識し、セリフを確認しながら、3人にしか出せない空気感を作っていった。監督が求めるテンポがあるので、ときには現場の勢いで撮ることもありましたから、その流れに取り残されないように、必死に食らいついていましたね」(藤原)。

3作目のメガホンで、ステディカムを多用したアグレッシブな画面構成など、演出面での飛躍も見せる本作。現代の日本を舞台にしている点は、前2作と同じだが「サンブンノイチ」には、どこか90年代にクエンティン・タランティーノ一派がドロップしたクライム映画の香りがする。品川監督は一番好きな映画監督として、タランティーノの名を挙げており、代表作「パルプ・フィクション」(1994)は「年に2回は見ている」というほど、インスピレーションを得るための源泉となっている。

「原作の木下さんも『パルプ・フィクション』が大好きだそうで、原作の各章のタイトルが、タランティーノ絡みになっている感覚はすごく自分と共通している。映画そのものも、タランティーノへオマージュを捧げていますが、それだけじゃないんです」と品川監督。

「意識したのは昔の邦画の中にあった洋画の匂いなんですよ。それこそ(本作の配給を手がける)角川映画の作品って、本当に洋画の匂いがありましたよね。さらに、さかのぼれば深作欣二監督の雰囲気や、『渡り鳥』シリーズの空気感を『サンブンノイチ』に再現したかった。さっき、タランティーノへのオマージュって言いましたけど、要は深作さんの作品が、タランティーノに与えた日本的な良き伝統や影響を『僕らに返してもらう』って感覚ですね」。幼い頃から積み重ねた映画体験の興奮と感動が、監督3作目にして血肉となった自信と技量をもって結実したのが「サンブンノイチ」なのだ。

画像4

深作監督といえば、晩年には「バトル・ロワイアル」(2000)を残し、同作に主演した藤原にとっては映画俳優のルーツであり、指針となった存在。そんな藤原は2014年、「サンブンノイチ」に加えて、「神様のカルテ2」「MONSTERZ モンスターズ」「るろうに剣心 京都大火編」「るろうに剣心 伝説の最期編」と出演作が相次いで公開され、自身のキャリアで例を見ないほどの“映画イヤー”を過ごしている。舞台やドラマでは味わえない、映画の魅力とは何だろうか。

「自己主張という言葉は少し違うかもしれませんが、社会に訴えかける力が大きくて、メッセージを伝える上で強い武器になる。俳優にとっては自分の人生において“1本”を残せる貴重な場所だし、観客の立場になれば、もう純粋に面白いのひと言。映画嫌いって人、いないじゃないですか? 『サンブンノイチ』は台本の段階でゲラゲラ笑いながら読み終わってしまう魅力があったし、豪華なキャストも見どころ。『ここに、この人出るんですか?』っていう驚きも、品川監督ならではですよ」(藤原)。

本作には藤原、田中、小杉に加えて、中島美嘉、窪塚洋介、池畑慎之介☆、哀川翔ら個性的なキャストが結集。タレントの壇蜜、「次長課長」の河本準一、品川監督の相方である「品川庄司」の庄司智春ら“飛び道具”にも抜かりはない。タランティーノに敬意を表し、深作欣二監督のDNAを刻みつけた「サンブンノイチ」には新しくも懐かしい、熱気とカオスが渦巻いている。

「サンブンノイチ」の作品トップへ