劇場公開日 2013年9月7日

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キャプテンハーロック : インタビュー

2013年8月26日更新
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原作者・松本零士氏に聞く!
日本を代表する孤高のヒーロー「キャプテンハーロック」誕生秘話

SFコミック界の巨匠・松本零士氏の代表的作品「宇宙海賊キャプテンハーロック」が、最新CG技術と斬新なストーリー&キャストによって3D超大作「キャプテンハーロック」として現代によみがえった。顔の傷にアイパッチ、ドクロを配したマントをひるがえす孤高のヒーロー・ハーロックは、まさに松本氏の分身ともいうべき存在。30年の時を経て再び覚醒した、「キャプテンハーロック」の誕生秘話に迫る。(取材・文・写真/山崎佐保子)

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1978~79年にテレビアニメ化された「宇宙海賊キャプテンハーロック」は、その独創的な世界観とカリスマ性にあふれた主人公ハーロックの魅力で、たちまち少年たちのあこがれの的となった。“海賊”と“宇宙”というコンセプトの融合は、少年の頃から現在までもずっと続く松本氏の夢そのものだった。

「子どもの頃から海賊映画が好きだったんです。ドクロの旗を掲げて海に出る男たちには、何の保証もないけど国境もない。運命も自分の旗に託して船出する。昔は海が無限大の未知の世界だったけど、今の人類にとってはそれが宇宙。未知の宇宙に飛び出していく危険も伴うけれど、全責任は自分にあるから後悔はしない。ハーロックは、生涯をかけて自分の思いを遂げていく登場人物なんです。小学生のチビの時に心の中に芽生え、その名称すら勝手に『ハーッロク! ハーッロク!』と歩く時の号令として誕生した。私は私の旗のもとに自由に生きる。たとえ意地っ張りと言われようと、どんな辛いことがあってもくじけない決意。それがハーロックです」

そうして生まれた本作の革新的映像の数々には、本場ハリウッドも息をのんだ。「アバター」のジェームズ・キャメロン監督も、「空前の出来、もはやこれは伝説だ。神話のように想像力にあふれ、壮大なスペクタクルと今まで見たことのない映像がここにある」と惜しみない賛辞をおくるほど。松本氏は、「新しい映像の作り方。CGで、よりリアルなものが描けることは分かっていたので楽しみだった。新しい技術を最大に使って新しい時代に踏み込んでいける、これは創作家としてはとっても幸せなこと。新しい分野に踏み込むことができ、とても嬉しい」と感慨無量の面持ち。日本の伝統芸ともいえる手描きアニメーションの最前線で活躍してきたが、「手描きもCGも、ともに人間が作るもの。手で描く場合は筆、ペン、着色にひとつひとつの思いがこもる。CGも、打ち込んでいくひとりひとりの思いが作り上げていくもの。絵は人の思いがこもったものなんです。架空のもので出来上がるわけじゃない。手法が違うだけで、機械も筆・ペンの進化したものだと思えば同じこと」とオープンマインドで製作に臨んだ。

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「APPLESEED アップルシード」「スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン」など世界に活躍の場を広げる荒牧伸志がメガホンをとり、「亡国のイージス」「機動戦士ガンダムUC」の作家・福井晴敏が脚本を手掛け、原作のスピリットを継承しながらも大胆にエッジを利かせてリブートした本作。ハーロック役に小栗旬、物語のカギを握る新キャラクター・ヤマ役に三浦春馬、ハーロックとアルカディア号に運命を委ねた異星文明人・ミーメ役に蒼井優、アルカディア号のクルーとして古田新太、福田彩乃ら豪華キャストが声優として参加した。原作総設定を務める松本氏は、「アニメーションは共同制作。みんなの意見を一致させ、楽しく作らなきゃ意味がない。これは新しいスタートラインの第1作。交響曲でいうと第1楽章が終わったところ。この次どこへ行くのか。きっと100倍くらいの出来事が起こる。さらにその先の1000倍くらいの未来に向かって、宇宙を無限大に旅していく。扉は開いたばかり」と、この先の展望に期待を寄せた。

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本作のもうひとりの主人公、史上最強の宇宙戦艦アルカディア号の船首には大きなドクロが刻まれている。ドクロといえば海賊の旗印だが、松本氏は「ドクロマークは『骨となっても私は戦うぞ』という意志の表明。人を威嚇(いかく)したり、驚かすためのものじゃない。誰が使おうと自由な旗印で、世界中共通して何の敵意もない印」と力説する。松本氏が一貫して描いてきたハーロックの自由精神が、このドクロマークに宿っていることが伝わってくる。

そんなアルカディア号に取りつく物々しいドクロからは想像しにくいが、松本氏が“生命”というものに抱く大きな希望からハーロックは誕生したのだという。「人は本来、生きるために生まれてくる。死ぬために生まれてくる命はひとつもない。ハーロックは最後まで歯を食いしばって生き抜いていく。何と言われようと自らの道を貫く。ハーロックは永遠に変わらない。決して大げさなことではなく、そういう思いを描きたかった。だから、ハーロックは自分自身を力づける作品でもあるんです」

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松本氏が少年の頃から描いてきた夢と、SF漫画家として育んできた哲学がふんだんに注がれたキャラクターがハーロック。そんな孤高のヒーローが広大な宇宙で繰り広げる冒険物語は、松本氏自身の“運命の瞬間”から始まっていた。

「これは青年の旅立ちの日に必ず起こること。私も東京に行く時、おやじから『自分で考えたのか?』と聞かれ、『そうだ』と答えると、『それなら構わない』と言われた。みんな生涯に一度、自分はどうするかという瞬間が来てるはずなんですよ。その瞬間に自らの意思で旅立つかどうか、それで運命が変わる。それぞれの旗のもとに、あなたの夢を果たしてほしい。私だってあの時、九州から汽車に乗ってなかったと思うとゾッとする。飼ってたネコにも別れを告げて、一銭も、帰りの切符さえ持たずに画材だけ持って列車に飛び乗った。まさに運命の瞬間。ハーロックはそんな旅立ちの物語です」

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