テルマエ・ロマエII : 映画評論・批評
2014年4月22日更新
2014年4月26日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
ストーリーは弱いがギャグ力は最強のSF(すごい風呂)コメディ第2弾
ヤマザキマリによる原作マンガは愉快な奇想にあふれているが、映画化1作目を大成功へと導いた勝因は、原作をもしのぐ大胆な奇想。日本人離れした濃い顔の阿部寛に古代ローマ人役を演じさせる、というワン・アイデアに尽きる。そのアイデアで、映画を2度もヒットさせられるのか?
気合いは感じられる。前作はローマのチネチッタでほかのドラマのセットを二次利用していたが、今回はブルガリアの巨大スタジオにコロッセオを含むオープン・セットを建造。スケール感のアップは文句なくクリアした。もちろん、観客を面白がらせるためのアイデアという面でも、「スター・ウォーズ」のパロディポスターやSF(すごい風呂)というコピーからも気合いは伝わってくる。
基本的なフォーマットとパターンは、前作と同じ。あえての繰り返しである。真面目な浴場設計士のルシウスが、仕事に行き詰まる度に現代日本へと風呂を通してタイムスリップ。日本の風呂文化に(大仰に)驚き、感動にうち震え、自分の仕事に取り入れる、という一連の展開で「お風呂って、日本っていいよね」という感慨を呼び起こす。今回は、殺し合いをするグラディエーターと平和的に闘う相撲力士を対比させたり、ウォータースライダーにマッサージチェア、ツボ刺激の足ふみくん、バスクリンなどなど、風呂ネタでテンポよくカルチャーギャップ・ギャグを連発し、幕開けから快調に笑いをとりまくる。阿部寛の「陸に上がった魚」っぷりにも(肉体美にも!)ますます磨きがかかり、これはもしかして当たりなんじゃないか、とうれしくなる。
ところが中盤を過ぎ、映画がシリアス味を増してストーリーを語り始めようとすると、途端に空回りが始まってしまう。ありゃー、ここまで前作と同じパターンにしなくてもよかったのに。上戸彩扮するオリジナルキャラも練り込みが足らず、尻すぼみ感がぬぐえない。混浴場面はお楽しみだが。こうなってくるとオペラ場面(一応、ここにも設定が加わっている)もひどく間延びして見えてくる。
それでも、ひとつひとつのギャグ力だけでお釣りが来るほど面白い、と断言してしまいたくなるのがこの映画。だって松島トモ子に白木みのる、「指圧の心は母心」の浪越徳三郎までがネタになっているのだから! 若い世代は意味不明だろうが、まあルシウス視点に立ってみればいいし、後で両親や祖父母に聞けば家族の絆が深まるかもしれない。それにしてもなぜ、竹内力は「平たい顔族」なのか? 3作目ではぜひその謎に迫ってほしい。
(若林ゆり)