「救世主は、たまたま通りすがっただけの男。」マッドマックス 怒りのデス・ロード ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)
救世主は、たまたま通りすがっただけの男。
マッドマックス、30年振りの復活ッ!あのマックス・ロカタンスキーが遂にスクリーンに帰ってくるッ!しかも若返ってッ!メル・ギブソンからトム・ハーディにキャストが電撃バトンだッ!
ということで、完全新作でございます。続編なのかリブートなのかはもうこの際どうでもいい感じでして。続編だと思えば続編で良いし、仕切りなおしだと思えばそれでも良いよね、という。ただシリーズの創造主、ジョージ・ミラーが手がけた正真正銘、血統書付き『マッドマックス』であることには変わりがないのです。
うん。はい、これだけ有名なシリーズですから今更『マッドマックス』とはなんぞや?という人も居ないでしょう。このレビュー欄を開いてる時点で分からないなんてこともないでしょうし。ですからシリーズの概要は省きまして、ダイレクトに感想いきます。
30年を経たマッドマックスが「こうなっちゃうのか!?」というのが私の正直なインプレッション、そして驚きです。いや、自分だけじゃないですかね。「なんなんだこれは」と。「ちょっと待ってくれ」と。「何を観せてくれるんだ」と。もう鑑賞された方ほぼ全員がそんな感想持ったんじゃないかと思います。まあ予告編から既に色々その片鱗は見せてくれてたんですが。それを差っ引いても、です。
ま内容はというと『世紀末の曠野をず~~~っとカーチェイスしてるだけの映画』で。まあ単純に言えばそうなります。だけども、だけども!『世紀末の曠野をず~~~っとカーチェイスしてるだけの映画』であるにも関わらず、一体全体こちらをぐいぐいと引っ張り続ける腕力、手繰り寄せ続けるこの牽引力たるやどうしたことなんだ?となる訳です。
一切、飽きが来ない!
次に何が起こるのか?
どういう展開に転ぶのか?
何が爆発するのか?どれが爆発するのか?
この画面に映ってる奴で次に誰が吹っ飛ぶのか?コイツか?アイツか?それともお前か?
次々と矢継ぎ早に慌しく目まぐるしく動き回るカメラワーク。あっちで横転、こっちで炎上、であるにも関わらず、しかし状況はしっかり把握できるという親切設計(マッドに狂ってる世界なのに新設設計というのもおかしな話ですが)。状況整理はスムーズ。スムーズな狂った世界。繰り返しますけど、一体どうしたことなんだ?となる訳です。
これはジョージ・ミラーのこだわりなんでしょうか。こだわりなんでしょうね。劇中セリフも少ないです。マックスに到っては殆ど喋りません。あと観客の嗜好の全方位に向けたのか、グロテスクな描写がまず出てきません。切り株一切なし。ただ逃げ続ける映画。桃源郷を目指す映画。なのに面白い。凄い快挙ですよこれは。
今回のマックス・ロカンタンスキーは、正直言って、彼が主役じゃなくても良かったです。というか主役であって主役じゃない。ただのその場に居合わせたお人好しで。だから良いんですね。だからこそ素晴らしいなと。救世主はたまたまそこを通りすがった男なんです。
次はどこの曠野を通り過ぎるのか。マッドなマックスの放浪は、当てもなく、この先もずっと続くのでしょう。