「狂気と暴力の世界」マッドマックス 怒りのデス・ロード sankouさんの映画レビュー(感想・評価)
狂気と暴力の世界
個人的には一作目の『マッドマックス』のレトロな世紀末感が好きだが、最初から最後まで疾走感たっぷりでスタイリッシュな今作も素晴らしい。
ほぼワンシチュエーションものといってもいいのだが、このシンプルを突き詰めたアクションシーンの凄まじさは見事。
核戦争により文明が滅び、思いやりも情けもなく暴力だけが支配する暗黒の世界。
本当に人間の知能指数はどうなってしまったのかというほどぶっ壊れた連中ばかり登場するが、『北斗の拳』が好きな身としては絶叫しながら飛び交うザコキャラの描写がたまらなく愛おしい。
大切な者を守ることが出来ずにトラウマに苦しめられ孤独に生きるマックスは、すべての資源を独占するイモータン・ジョーの一味に囚われてしまう。
ここで描かれるのは徹底的な格差社会だ。
白塗りでスキンヘッドの戦闘集団ウォーボーイズは、何らかの事情で長生き出来ない身体になっており、ジョーに魂を救われることを無上の喜びと感じている。
ジョーは子供を産ませるためだけに何人もの女を囲っているのだが、ある日ジョーの部隊を統率するフュリオサは5人の妻を秘密裏に連れ出し、フュリオサの出生地である緑の地に匿う逃亡計画を実行する。
ジョーはすぐさまウォーボーイズを引き連れフュリオサの後を追う。
マックスもウォーボーイのひとり、ニュークスの血液袋として戦場に連出されるが、激しい戦闘の末、彼は成り行きでフュリオサと行動を共にすることになる。
誰も他人のことを思いやらない世界で、少しずつ心を通わせ団結していくマックスとフュリオサと5人の妻たち。
明らかにザコキャラのひとりだと思われたニュークスが、いつの間にか自分の存在意義を示すために一行に加わる展開は意外だった。
ジョーの追跡をかいくぐって故郷にたどり着いたフュリオサだが、既に緑の地は失われていた。
そしてマックスは彼女に告げる。
ジョーを排除すれば緑と水の豊かな砦にこそ生きる希望があると。
とにかくほとんどのシーンが巨大なトレーラーを使っての戦闘ばかりなのだが、次から次へと新しい展開があり視覚的に全く飽きることがない。
この最後まで途切れない疾走感がこの映画の最大の魅力だろう。
クレイジーな世界観も絶妙で、一度観たら忘れられないインパクトを残す。