「英雄の資質」マッドマックス 怒りのデス・ロード Hanaさんの映画レビュー(感想・評価)
英雄の資質
クリックして本文を読む
この映画のおかげで2015年に生きているということがこれほどありがたいと思ったこともない。誇張ではなくそれぐらい傑作である、70歳になるジョージ・ミラーには世界がどう見えているのだろうか。ただただ脱帽。
過酷な状況のなかで利他的な行動を取れるものこそが英雄となれる。ジョージ・ミラーの描く物語はいつもそうだ。シンプルな構成、行きて帰りし物語、極端に削られた台詞のない脚本は無声映画のようでもある。逃走と追跡、映画においてはこれだけでいいのだ。
フィリオサが本作の実質的な主役であり、本作は彼女の物語だ。マックス、ニュークス、イモータン・ジョー、そしてワイブス。彼らが織り成す追走劇は見事の一言で、なによりスクリーンに映る全てが美しい。敵も味方も最適答の応酬であり、ここまで計算され完璧なアクション描写も見たことがない。
息つく暇もなくあっという間に終わる。ジャンキーXLの音楽も相まって物語に引っ張られていく様はまさに陶酔。劇場から出たときには何が起こったのか分からなかった。ただ鼓動と憔悴だけが残り自分が見てきた世界が変わったのだけが分かる。
映画史を更新したであろう本作は非の打ち所が全くない。マッドが世界を焼きつくした美しく衝動的な映画。映画とは何かの答えのひとつがこれだろう。この映画に言葉はいらないのかもしれない。
コメントする