「中立でよくできている」終戦のエンペラー 譲二さんの映画レビュー(感想・評価)
中立でよくできている
終戦のエンペラーを観てきた。中立的でよくできていた。ネタバレになるかもしれないので見たい人だけ参考にしてもらえれば嬉しいです。
簡単にいうと天皇に戦争責任があるかどうかがこの映画の軸です。それを調べる上で問題になるのはアメリカと日本の価値観やコミュニケーションの仕方の違うこと。だけど、最後はある共通点でわかりあえる瞬間が来ます。
知っていて得するかもしれないのは大きく分けて三つ。
1.歴史的背景
終戦間際、アメリカ側は戦争責任としてエンペラー(天皇)を処刑してピリオドを打つという考えが主流だった。それはイラク戦争とかでもそう。一方で、天皇陛下が戦後各地を巡幸されている最中暗殺されなかったように日本では存続する声の方が強かったと思う。
2.恥の文化vs. 罪の文化
日本のように恥の文化であれば、恥かどうかは他人が決める事なので周囲の反応が大切。これは名誉も同じ。一方でアメリカのように罪の文化であれば自分の行動が正しいかどうか自分に問いかけることになる。どっちの文化がダメってことはなく、人によってはどっちの価値観をもっている。
3.アメリカ独自の倫理観
欧米という言葉があるけどヨーロッパとアメリカでは価値観が違うところがある。これは魔女狩りの話で例えるとわかりやすいかもしれない。ヨーロッパでは魔女かどうか疑われて、当の本人がそうじゃないと否定すれば無罪。アメリカでは逆に否定すると有罪。実際にそうでなくても認めれば更正の余地があるとして無罪。これはピューリタンの価値観でピュア(純粋)であることを重んずるため。
たぶんこの三つを知っているとよりわかりやすくなるかもしれない。基本的に一方の考え方を押し付けたり、ステレオタイプがないようにみえたのでそういう意味では中立的にできていたと思う。