「これぞフランス映画。」タイピスト! Theo5さんの映画レビュー(感想・評価)
これぞフランス映画。
フランス映画はてきとーなイメージがある。
ほとんど説明しない。これでもかと説明しない。
それでもって、こんなシーンいるのか?と思うような小洒落たシーンをいっぱい挟んでくる。
まるでテレビの説明書には電源を入れて見ろ、レンジは電源を入れて温めろとしか書いていないのではと本気で思うぐらいのてきとーさなのだ。
日本人からしたら信じられないのだが、それでもとりあえず使えてしまうから、まあいいかとなる。
それが私の中でのフランス映画だ。
今作もまさにそんなフランス映画の伝統的なてきとーさが色々な場面で発揮されていて、最後に、「ね、でもお洒落だったでしょ?」とニッコリ笑顔で締められてしまう感じが、まさにそれ。
最初の導入から主人公が秘書として雇われた理由などもはっきりとした表現がないまま、とんとん拍子で話が進んでいく。
恋愛感情なんて説明なんて出来ないだろ、みたいな洒落た事を言われてしまえばおしまいなのだが、雇われた理由を察するに、主人公が男の好みのタイプだったとか、タイピングが速いのが気に入られたとかではなく男が無類のブラジャー好きだったからなのかと思われても仕方ない作りだ。
雨のシーンで思わずブラが透けてしまうだとか、洗濯物に残っていたブラジャーをいじくりまわすシーンなどから男にはかなりブラジャーに対する執拗性があるのではないかと推測されるのだが、きちんとした説明がないので勝手な解釈をするしかない。
でもそれでいいのだとこの映画は言っている気がする。
話としては主人公と男のラブコメとしてもどこか見た事のあるような王道な展開ばかりで退屈だし、タイピング競技としてのスポコンとみても、特に大きな逆境もないし、魅力あるライバルも皆無なので見ていて面白い要素がない。
ジブリ映画でほとんど気にならない煙草シーンが気になって仕方がない人が見たら、失神するのではないかと思う程、煙草を吸いまくる映画だったなという印象が一番強いかもしれない。
私はとても好きなのだが、やっぱりタイピングという一番の肝の存在が地味なのだ。
スポーツと違って、カタカタ指先を動かしているだけで、見ていて何も熱い気持ちがわいてこない。
唐突に始まるラブシーンだとか、キスシーンも印象的だとは思うのだけど、やっぱり説明を欲しがる日本人にはもう付いてはいけない。
ブラジャー好きの男が煙草をめっちゃ吸う、タイピングが地味な映画だった。