コン・ティキのレビュー・感想・評価
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物語の『オチ』にビックリ。
実話に基づいています。1500年前と同じ筏で太平洋を東から西へ横断した事で知られるヘイエルダールの物語の映画化。
不勉強だったんですが、ヘイエルダールって、現代の人だし、コン・ティキ号の冒険も現代の事だったんですね。当然第二次大戦前の話かと思っていたんですが、実際は、第二次大戦後の話。しかも、ヘイエルダール自身は2002年まで生きていたんですねぇ。いやぁ、不勉強不勉強。思い込みって、良くないです。
冒険が成功したと知っている今でも、その冒険譚から思いつく言葉は『無謀』何ですが、そんな結末を知る由もない当時の人々が『無謀』と思うのは当然で、出版社や学術団体に資金援助を申し込んでも、当然のごとく拒否されています。そんな中、援助に応じたのはベルー政府。嘗て、コロンブスを援助したのがスペインだったみたいですね。
それと、結末が何とも劇的。ポリネシアの島の調査の時、文字通り生死を共にしたと言うべきリブとの別れ。いやぁ、劇的。
ただ、物語のほとんどが、ガラパゴス付近までの事になっていて、ガラパゴスを超え南赤道海流に乗ってからは、いきなりゴールのラロイア環礁でした。と言うことは、南赤道海流に乗ってしまったら、ああとは順調だった? 確かに南赤道海流に乗るまでが、結構大変だったわけですがね。もっと物語があるかと思ったので、ちょっと呆気なかったです。
本当の冒険者たち
ノルウェー映画
原題:「KON-TIKI」
監督:ヨアキン ローニング
エスパン サンドベルグ
2013年アカデミー賞、ゴールデングローブ賞候補作
ノルウェーの人類学者で冒険家、トール ハイエルダーによる「コンチキ号漂流記」(偕成社)や、「コンチキ号探検記」(ちくま文庫、河出文庫)は、子供の時に、夢中で読んで、愛読した。冒険物語の中でも ピカイチ。ドキドキワクワクの連続だ。実際に、ハイエルダーがコンチキ号で、南米から南太平洋まで航海したのは、1947年だが、彼の航海記は、いま読んでも大人も子供も楽しめて、全く古さを感じさせない。ユーモアたっぷりで、ウィットに富んだ、気品のある文章は、いつまでも人を惹きつける。20世紀の名著の一つだそうだ。
実際航海中に クルーによって撮影されたフイルムは、長編ドキュメンタリーに編集されて、1951年のアカデミー賞、長編ドキュメンタリー賞を受賞している。
コンチキとは、インカ帝国の太陽神ピラコチヤ コンチキの名前からきている。ノルウェーの人類学者トール ヘイエルダールは、南太平洋ポリネシアの島々を学術調査して、ポリネシアの神々がインカ帝国のそれに酷似していることや、人々が東からやってきたと、言い伝えられていることから、ポリネシア人は 南米から移ってきた民族であることを確信する。当時、ポリネシア人が はるか、8千キロもの海を渡って 南米から来たという学説を信じる者はいなかった。そこで、彼は、自説を証明しようと、コンチキと名付けた「いかだ」を作り、南米から南太平洋に向かう計画を立てた。インカ帝国を征服したスペイン人の残した図面をもとに、バルサという南米産の常緑樹や、松、竹、マングローブなどを使って、いかだを組み、麻でマストを作る。何の動力もつけずに、風と、フンボルト海流を頼りに、5人のクルーとともに、太平洋を渡る。
南米ペルーを1947年4月に出発、102日後の8月に、彼らは、遂にポリネシアのツアモツ諸島に到着。7000キロ余りの距離を航海して、ペルーからポリネシアまで 人々が海流にのって移動することができることを証明した。ポリネシア人の先祖が南米のインデアンだという学説が証明された形になったが、のちに、ヘイエルダールの学説は否定される。DNAなど、科学的な調査によって いまではポリネシア人はアジアを起源とすることが、定説になっている。
しかし、ヘイエルダールはいつまでも、ノリウェーの英雄であることに変わりはない。現在、コンチキ号は、ヘルシンキの博物館に展示されている。
2006年に、ヘイエルダールの孫たち6人が、再びコンチキ号を作って、ペルーから太平洋を横断する航海に挑戦した。ヘイエルダールが作ったのと同じ、いかだを作り、ポリネシアに渡った軌跡をなぞることによって、今日の海洋汚染が海中動物や植物にどのように影響しているかを調査するのが目的だったそうだ。60年経っても ヘイエルダールの冒険心は、孫の代まで受け継がれているようだ。
映画は 今年のアカデミー賞候補になったが、受賞にならなかったのは、アング リーの「ライフ オブ パイ」の同じような海の漂流ものが重なったのが不運だったのかもしれない。映像の魔術師、アング リーの鮮やかな色彩の氾濫、光と影の芸術、最新技術を駆使しての映像美には、誰も勝てはしない。
しかし、「コンチキ」の自然描写も、秀逸だ。海から日が昇り、海に日が沈む。サメの襲撃による恐怖、くじらの群れとの交流、光り輝くクラゲの遊泳、降るほどの星々。
ハイエルダールの描き方も良い。自分の学説の曲げず、それを証明するために学識者や「ナショナルジェオグラフィー」や、新聞社などから 航海に必要な資金を集めようと、足を棒にして回るが、一向に資金提供者を見つけられない。ペルー大使に直談判して 誇り高いペルー民族が ポリネシア人の先祖だと、熱心に説得して資金を引き出すところなど、涙ぐましい。航海のクルー探しでも、経験者を集められず、やってきたのは、冷蔵庫のセールスマンで、海を知っているどころか、泳ぐこともできない男だ。
やがて航海が始まり、6人6様の個性の強い男たちが、協力したり、ぶつかったり、いがみ合ったりするが、キャプテン ハイエルダールのいつも穏やかな人柄が救いになる。
唯一の外部との連絡を果たす無線機がだめになっても、現在位置がわからなくなっても、客観的にみて、全く希望がないように思える局面でも、自分の根底に楽天性をもち、自分を信じることが大切だということが よくわかる。冒険物語はいつも自分を励ましてくれる。だから、読むのも、見るのも大好き。
この映画をみていると、ノルウェー人にとって、いかにハイエルダールが、大切な存在で、みなが誇りにしているかがわかる。アムンゼンにしても、本当に立派な冒険者たちを生んだ国だ。
6人のクルーとキャスト
トール ハイエルダール :パル ヘイゲン
エリック ヘイゼルベルグ:オッドマグナス ウィルアンソン
ベント ダニエルソン :グスタフ スカルスガード
クント ホーグラン :トビアス サンテマン
トルステイン ラビー :ヤコブ オフテブロ
ヘルマン ワジンガー :アンドレア クリスチャン
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