ブランカニエベスのレビュー・感想・評価
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闘牛姫
“ブランカニエベス”って何かと思ったら、スペイン語で“白雪姫”。
『白雪姫』を下敷きに、スペイン名物・闘牛をミックスし、モノクロ/サイレントで描いた異色作。
でも、前半は『白雪姫』って言うより『シンデレラ』っぽくない…?
むか~しむかしあるところに、1920年代のスペイン・アンダルシア地方に、人気者の闘牛士がいました。
妊娠中の奥さんもいて、幸せの絶頂でした。
しかしある試合で闘牛士が大怪我をしてしまい、そのショックで奥さんは娘を産んで死んでしまいました。
娘はカルメンシータと名付けられ、おばあさんが引き取り、身体が不自由になった闘牛士は看護士が再婚しました。財産を狙って。
そして何年か経っておばあさんが亡くなり、カルメンシータは引き取られる事になりました。意地悪な継母の元に。
そこで毎日のようにいじめられ、大変な仕事を与えられ…。
…って、完全『シンデレラ』じゃん。
ツッコミ所も。
カルメンシータが引き取られた時一緒に連れてきたニワトリのペペ。
継母から絶対に行くな!…と言われている二階へ逃げてしまう。
連れ戻す為、二階へ。恐る恐るある部屋へ。
そこで出会ったのは…
生き別れた父。
感動の再会はここまではいい。
が、すぐ継母にバレるかと思いきや、その後も何度も何度も何度も会いに行く。空白の期間を埋めるかのように。
継母、気付かないの…? 自分の贅沢三昧に惚けているって事でもあるけど。
それにこの時、カルメンシータは父から闘牛をレクチャー。才能を開花させていく。
が、遂にある事で、継母に感付かれてしまう…。
ペペや父が不審死。意地悪と言うより、悪女!
継母に憎しみを抱くようになるカルメンシータ。
鏡よ鏡、鏡さん…は無いけれど、ここからようやく『白雪姫』っぽくなる。
雑用で森に行かされたカルメンシータは継母の運転手に首を絞められるも、何とか命は助かる。(運転手は殺したと勘違い)
そんな意識朦朧のカルメンシータを助けたのは、陽気に♪ハイホー♪ハイホー…を歌わない!?
だって彼らは、7人の小人でも、7人の“小人闘牛巡業団”なのだから!
彼らと闘牛巡業の旅へ。
父から受け継いだ才で、各地で注目を集め、人気者になっていく。その名も、“ブランカニエベス”。
小人たちも個性的。“王子様”な小人もいれば、カルメンシータを妬む小人も…。
カルメンシータの名が新聞などで知れ渡ったという事は、あの人物の耳にも。
運転手の失敗に激怒し、自分の手で始末しようとする。勿論方法は、アレ。
クライマックスの闘牛。
大勢の観客の中、競技場に立つカルメンシータ。
罠を仕掛ける小人の一人。
そして、現れた継母。
“ブランカニエベス”の結末は…?
“ヨーロッパのサイレント映画へのラブレター”と語る、パブロ・ベルヘル監督のセンスある演出。
美しい白黒映像、情感たっぷりの音楽。
『白雪姫』がベースなので、サイレントでも話は分かり易い。
カルメンシータ役のマカレナ・ガルシアの凛々しさは特筆もの。剣を構え、牛から目を離さぬ姿はカッコ良さすら。
でもそれ以上に、継母役のマリベル・ベルドゥ。本家『白雪姫』の魔女すら恐れるほどの悪女っぷり!
『白雪姫』ベースと言っても闘牛題材の人間ドラマ…と思いきや、毒リンゴは出るわ、カルメンシータはそれを食べ…やはり『白雪姫』ベースのダーク・ファンタジー。
悲しい話。悲しい結末。
“キス”も意外な相手。
ダーク・ファンタジーで、悲劇的な人間ドラマ。
少々難点感じたり、センス感じたり。
不思議で異色の“闘牛姫”の世界に誘われる。
白雪姫の闘牛士版?
白雪姫の闘牛士版?ともかくスパニッシュギター音楽が素敵で、白黒無声映画ということでアカデミー賞をとった『アーティスト』の影響なのかと考えつつも、心地良く鑑賞できる。
石炭部屋に入れられ、まともな食事も与えられず、父親に会うことも許されなかったカルメンシータ。可愛がっていた鶏ペペがエンカルナによって唐揚げにされたシーンはショック。
大人になったカルメン。しかし父親が継母に殺されてしまう(謎)。そして魔の手はついにカルメンにまで・・・死にかけていたところをこびと闘牛士団によって助けられる。記憶喪失になっていた彼女は父親からひそかに教わっていた闘牛士の才能を発揮し、こびと達によってブランカニエベス(白雪姫)と名づけられる。
大きな闘牛場でデビューしたブランカニエベス(マカレナ・ガルシア)。しかし、執拗な継母エンカルナは闘牛場で彼女に毒リンゴを食べさせたのだった・・・目覚めない彼女は今や見世物小屋の出し物にされ、10セントで大勢の人にキスされてゆく。何というエンディング!最後はこびとの一人によるキスで涙を流す・・・だけ。
観たかったやつー!
以前、一部の映画館でしか上映されてなかったので、
観に行こうと思っていたのですが、都合がつかず観られていなかった作品。
フライヤーのデザインで一気に興味をひかれました。
カッコいい!怖い話なのかな!?
と思っていたのですが、ホラー要素は無かった。
衣装も、素敵だと思ったらDiorが協力しているんですね。
カルメンシータと、祖母、父親との別れが本当にかわいそうでした…。
楽しく、優しくしてもらった思い出となるシーンがきちんとあったから余計に。
白雪姫や、シンデレラ、アリスをモチーフにした作品に、原作超え(あるいは、最初に映像化した作品を超える)をするものが無いので、
今までは肩透かしをくらったような気持ちだったのですが、
これはそこまで白雪姫です!!という主張がなく自然に観られました。
はっきりとしたハッピーエンドかと思ってました。
でも、こういう終わり方も好きです。切ない。
変態とスタイリッシュの境目
変態じゃ聞こえが悪い、穏便な言い方だとフェティシズムか。
本作、うっすらフェティシズムが漂う。闘牛、白雪姫の継母などのモチーフ自体、嗜虐のフェティシズムだし。
ただあくまでもうっすらなので、エンタメ性・スタイリッシュ感は損なわない。
そこらへんを物足りなく思うか、このくらいでちょうど良いと思うかは人それぞれ。
(そもそもそういう視点で見ない人も居るだろうし。)
全体的に薄味だった中で、ラストシーンが印象的。
死を描くほど生が匂いたち、生を描けくほど死が匂いたつ。
(生というよりエロ。それまでは押さえ気味だったフェティシズムが濃厚に漂う。)
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1920年代のスペインが舞台の本作。
当時のスペイン&闘牛を評して、かのヘミングウェイは「激烈な生と死とが見られる唯一の場所」と書いた。
そんな言葉も思い出す作品であった。
色や台詞を排した結果、より深くスクリーンに集中して見ることができました。
モノクロ&サイレンスの本作は、デジタル全盛のこの時代に、全く時代に逆行する手法を用いて製作されています。けれども色や台詞を排した結果、映し出させる映像に、自ら色を与え、出演者の演技には自ら台詞を想像させて、より深くスクリーンに集中して見ることができました。無声映画の新たな可能性に衝撃を受けた傑作です。
東京でも新宿武蔵野館でしか上映されていない作品だけど、映画ファンならきっと本作の作品世界に陶酔できると思いますので、ぜひご覧になってください。
ストーリー展開もスピーディー。冒頭の主人公の父親のアントニオが登場する闘牛シーンから、いきなり激しいストーリーの流れで一気に本作の世界に観客を引き込込まれてしまいました。
アントニオはあり得ないアクシデントで闘牛に襲われて、瀕死の重傷を負ってしまいます。すると今度はその場面を闘牛場で見ていた母親のカルメンが急に産気づき、子供の命と引き替えに死んでしまうのです。アントニオは、愛する妻を亡くしてしまった悲しみからか生まれた来たカルメンシータを遠ざけて、自分の看護を担当したエンカルナと再婚。いっぽうカルメンシータの不幸はさらに追い打ちをかけて、今度は育ての親となっていたドナが病で倒れて死別することに。
エンカルナに引き取られたカルメンシータは、汚い地下室をあてがえられて、下女としてこき使われる日々を過ごすのです。
、エンカルナからは、絶対に行ってはならないと厳命されていた二階の部屋を恐る恐る覗いたカルメンシータは、生まれてから一度も会ってこなかった父親を発見。アントニオはカルメンシータを避けていたのではなく、エンカルナがふたりを徹底的に引き離していたことが分かります。父と娘の体面シーンは、台詞がない分、余計に感動してしまいました。
カルメンシータが大人に成長してからは、エンカルナは悪女ぶりを発揮。アントニオを事故死に見せかけて頃した後、不倫相手をけしかけてカルメンシータも無き者にしようと襲わせます。
瀕死のカルメンシータを救ったのは、小人の闘牛士軍団でした。カルメンシータは、襲われた際に記憶はなくしたものの、アントニオから闘牛士の手ほどきを受けていたことは体が覚えていたのです。そこで自らを“ブランカニエベス゛と名乗り、7人の小人の闘牛士たちとともに闘牛士となり、スペイン各地を巡業。やがて人気者となって行きます。
うん?
まてよ…ととと!
“お姫さまのような主人公”に“7人の小人”、“邪悪な継母”、といったら、あっあなた、これって“白雪姫”のバクリではありませんか!むむむと思って、チラシをちらりと見たら“ブランカニエベス゛とは文字通り白雪姫のことだったのです。予習を全くしないでみたから気づきませんでした(^^ゞ
オリジナルキャラクターは活かしつつ、この物語には「シンデレラ」や「赤ずきん」、「眠れる森の美女」といったグリム童話代表作のエッセンスが散りばめられていたのです。そこにスペインの国技“闘牛”を大胆に織り交ぜることで全く新しいファンタジーを創り出すことに成功したのでした。おとぎ話が持つ「誰もが憧れる夢のような華やさ」とラストシーンに際立つ「神秘さ」に加えて、「どこか物悲しくダークな世界」という魔性の二面性に魅かれずにはいられないことでしょう。
本作最大の見せ場は、かつてアントニオが立ち続けた名門闘牛場にブランカニエベスが発出場するシーン。白雪姫闘牛士人気で会場のチケットは完売、超満員の観衆が見守るなかで登場するブランカニエベスに、過去のアントニオとの思い出がオーバーラップして描かれます。父親の教え通り、牛の目を射し入るように見つめ、トドメの剣を構える姿は、惚れ惚れするほどにカッコイイのです。熱狂的な闘牛シーンの後、待ち構えていたのは、エンカルナが手にした“毒リンゴ”!いくらストーリーが“白雪姫”になぞっているとはいえ、そこまでベタに合わせる必要があるのかと思いました。もっと姫の闘牛シーンを見たかったです。
台詞がない分、背景に流れる音楽は、凄く素敵です。まるでクラッシックのコンサートの開始を告げるストリングスのチューニングの音を皮切りに、スペインの伝統芸能フラメンコの軽快なリズムを最大限に引き出しながら、スペインの美しいロケーションと熱い躍動が、目も耳も感性も満たしてくれる作品でした。
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