劇場公開日 2013年9月7日

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「Xavier Dolan」わたしはロランス vary1484さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5Xavier Dolan

2019年3月20日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

興奮

知的

天才が若かりし22歳で見せた衝撃的芸術作品。
何度も思うが、この監督天才すぎる。少なくとも私にとっては超ど真ん中ストライクの映画を作ってくれるナンバーワンの監督だ。この作品でも見せてくれた現実と非現実のギャップに圧倒される映画体験が美しすぎる。

ドラン作品で一番私が好きなところは、非現実もしくは超現実の描き方。この作品にもわかりやすいところで何度か、細かいところでは数え切れないほど、非現実・超現実を表現している部分があります。スローモーションを使った、ショットなどは印象に残りやすいところだと思います。これは映画全体に渡って描かれるのではなく、8割が現実的で人間味あふれる会話などのシーン占められる、間々でアクセントとして入ってきます。それによって、現実と非現実のコントラスト、ギャップが生まれます。これはかなりリスキーなことで、視聴者が混乱したり、テーマやキャラクターを見失ってしまう危険性が十分あります。そこでドランの技量が明らかになるのです。その現実と非現実のギャップの架け橋となるように、テーマを下敷きにしています。この映画のテーマは明らかにLGBTQの多様性。そのまっすぐな確固たるテーマがあり、そのマイノリティーとしての特徴、魅力を増幅させるように、そのギャップを使います。トランスジェンダーの主人公が社会からの目や愛する人との生活などで葛藤するのがストーリーの中心なのですが、その葛藤の最中で現実から逃げ出したいという瞬間や周りの目など気にせず、自分の世界、自分たちの世界を楽しんでいる時など、我々が現実世界でも非現実を感じる瞬間とリンクさせて描いてるからこそ、リスクを回避し、最大限にギャップを使えています。さらにその超現実的世界を彩る、プロダクションデザインや撮影、さらには現実から超現実へと飛躍させるキッカケとなる台詞が周りを堅め、キャラクターを後押しする。コンポジションは彼のブランド化となっているのだが、リスクを犯したブランク部分の使い方がすごすぎる。キャラクターの感情を暗示するかのようなエスタブリッシングショット。さらには俳優としても一流の才能を持っているからこそのディレクティングと編集。どの部分を取っても一流すぎて息が出る。

圧倒的な演技を100%、もしくは120%でスクリーンに映す才能がさらに彼の才能。今作では会話シーンで、カメラをパンしワンショットでその会話を撮影する手法を取っているのだが、そのショットが生きてくるのは、撮影と監督と俳優がビジョンを共有できているからこそ。たぶん映画撮影の中で一番難しいのは、お互いが想像している映像を共有できるのかということ。さらには、それぞれプロが作りたいものという、映画の芯の部分が共有されている。それがドランの1番の才能、魅力。だから最高の間が表現でき、それがリズムとなり、キャラクターとなり、映画となる。

彼の映画を観ているときは、全てを受けいれられる。これは、フィルターが少しかかっているかもしれないが、それもこれまでの彼の作品を観て作り上げられたフィルターなのだから、全く問題はない。むしろ、一つの映画ではなく、彼の映画人生を通して、映画でメッセージを伝えてくれるという半端じゃない能力で向かってくる。本当に本当に次の作品が楽しみ。また、この当時のドランが帰ってくる。

vary1484