「ジャンヌ、なお盛ん。」クロワッサンで朝食を ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャンヌ、なお盛ん。
うわ、J・モローだ!と思った。いやいや、まだまだお元気^^;
ずいぶん歳をとって(現在85歳?)顔も皺くちゃ、なのに女気
だけは猛々しいほど匂い立っている。老いてなお盛ん、とは
こういう時に使う用語なのかな?と思ったほどチャーミング。
私が観てきた彼女はどちらかといえば悪女で、男を翻弄する、
やはり女臭プンプンの今で言う美魔女?な感覚だったのだが、
それが現在もまったく衰えていないところが嬉しい。
口喧しく我儘で多くに嫌われる老女になろうとも、彼女は更に
語気を強めては家政婦をイビリ倒すのだ…もっと凄まじいか、
あるいはコメディか、と思っていたけれど、どちらも外れた。
ただただ寂しい、孤独な老女(家政婦は初老)の交流だった。
どちらかといえば家政婦のアンヌが、私には痛感できた。
いずれ(これから)訪れるかもしれない親の介護や、子供達の
無関心・疎遠、たった一人で母親の介護を担い、飲んだくれの
元夫の行為に耐えて、そこでしか生き甲斐のなかった女性が、
憧れのパリに家政婦としてやってくる。が、相手は捻くれ老女。
またコイツの世話をするのか…と思いながらも、毎晩パリを
徘徊する彼女の、心の拠り所を探す旅のような扱いが面白く、
焼きたてのクロワッサンこそ朝食、という老女の拘りも面白い。
言い方は悪いが(誰にも必要とされない)二人が、誰かに必要と
されることがどれだけ大切か、人生に希望や愉しみを見出して、
不満を歓びに変える生き方をするためにはどうしたらいいのか、
というような部分で、やや老年教訓本のようにも見てとれた。
誰にでも訪れる老い、孤独、病、に対して「お金」は最大限の
必須であっても、「愛」のない生活は耐えられない、というのが
あちらこちらに顕れている。さすが、J・モロー。なおも盛ん。
物語としては普通なのだが、二人の女優の表情や行動を
メインに観察すると、色々見えてきて考えさせられる一本。
(年下の愛人をまだベッドに誘う老女。彼女にしかできない演技)