劇場公開日 2013年7月20日

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「家政婦は見た、憧れのパリ、老婦人の光と影」クロワッサンで朝食を マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5家政婦は見た、憧れのパリ、老婦人の光と影

2013年7月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

幸せ

極寒のエストニアからパリに出てきたアンヌは、垢抜けない防寒コートとブーツでキャンバス地の安っぽいカートを引く。長い母親の介護の疲れか表情も暗い。
気難しい老婦人フリーダには簡単に受け入れられないものの、夜な夜な憧れのパリを散策し、ウインドショッピングで気を紛らせていく。エストニア出身の女優、50代半ばのライネ・マギのウインドウのドレスを見つめる目が少女のように輝く。少しずつアンヌの身なりが洗練されていき、顔の肌ツヤも出て綺麗になっていく。なかなか魅力的な女優さんだ。
そんな彼女でも、フリーダの元を飛び出すときは、またあの冴えないカートを引きずらねばならないが、ヒールで颯爽と歩く姿には、同情よりも不釣り合いな絵の面白さに惹かれる。
カフェのステファンを尋ねたあとの含み笑いも意味深だ。語リ過ぎない演出がいい。
この作品、看板女優はもちろんジャンヌ・モローだが、事実上の主役はライネ・マギなのだ。

ジャンヌ・モローと彼女に引けをとらない演技を見せたライネ・マギ。さらに二人の女優の間に髭面のパトリック・ピノーが割って入り、話はシンプルだが作品を味わいあるものに仕上げている。

ヨーロッパ映画は国家間の問題や歴史が尾を引く台詞や話が多く、本作もエストニアの知識があればもっと深く理解できたかもしれない。島国日本では、諸外国の興亡は一般人の常識からかけ離れたものだ。原題をそのまま邦訳して使っても漠然としたものになる。それにしても「クロワッサンで朝食を」は客受けを狙ったのが見え見えで安直過ぎないか。

マスター@だんだん