「ストレートな新海節」言の葉の庭 dewさんの映画レビュー(感想・評価)
ストレートな新海節
はじめて新海作品に触れたのは秒速5センチメートルでした。
映像の美しさ、心の琴線に触れるような繊細な演出とストーリーに魅了され、これは是非ともスクリーンで見たい!と思っていたのですが、今回の「言の葉の庭」でやっと叶えることができました。
すでに2回見ての感想ですが、スクリーンで見れて本当によかったと思っています。
「雲の向こう、約束の場所」のような、ちょっとファンタジックで不思議な空気のする作品も好きなのですが、こういう無駄がなくストレートな作品もとってもいいですね。
タカオが
「まるで世界の秘密そのものみたいに彼女はみえる」
とユキノを表現したように、彼女そのものがこの作品の神秘的な部分であって、それだけでこれほどの美しい物語を描けるのですから、新海監督の力量底知れずっといった感じです。(実際、ユキノはそういう魅力的な女性であったかは微妙なところですけどね笑)
逆にいうと、無駄がなさすぎて面白みがないとも言えますが・・・
例えば、「そう、私は世界そのものなの」とユキノが口を開いて、なにか重大な世界の秘密についてタカオに語る、みたいな展開があってもそれはそれで・・・(いや、それはナシかなぁ笑)
ただ、年下の男の子が、ああいう年上の女性に惹かれていくっていうのはそのくらい大げさにしてもいいくらいなんだと思います。
それを踏まえたうえで、2人の距離感というのがすごく丁寧に描かれていて、感情を爆発させるラストシーンの少し前のシーンから、ラストシーンまでの2人の会話、
その会話の中にある言葉(言の葉ですね)のもつ意味をすごく考えさせられ、タカオとユキノ、どちらの視点から見ても共感を得られるような素晴らしいシーンでした。
自分は男で、年もどちらかというとタカオに近いのですが、2回目見たときはとくにユキノの気持ちも痛いほどわかるような気がします・・・
これぞ、新海監督の真骨頂と言える演出で、改めて監督のよいところを感じられたのはとてもよかったです。
そして、他のレビューでも何人もの人が書かれているのですが、新緑、雨といった美しい日本の風景を描きたいという監督の意思がはっきりと示されており、映像美は流石といったところ。
その分ストーリーが後付けでつまらないと思う方がいても仕方がないかもしれませんが・・・笑
でもやっぱり、ユキノの足に触れるシーンとかすごく美しくて、ドキドキして、ずっとこの瞬間を感じていたいとも思ったくらいですので、とてもオススメな作品です。
物語と映像との一体感を素直に感じられれば、楽しめる作品だと思います。