「二人の吐息が感じられるよう」言の葉の庭 白波さんの映画レビュー(感想・評価)
二人の吐息が感じられるよう
2013年5月劇場鑑賞
私は何だかんだと新海作品が好きで、新作が発表されてからずっと楽しみにしていました。
新海作品はその美しい風景描写で有名ですが、「言の葉」も期待を上回る絵を見せてくれます。本当に美しいんですね。
もともと光りの使い方がうまい人なのですが、今作は更に雨や波紋や水面など「水」の演出もとても印象に残りました。
あといつもの電車の描写。 踏切や改札やホーム、車内やそこから見る外の景色、大好きなんですよね。
これはあくまで個人的な感想なのですが、その時一番美しいアニメーションは「雲のむこう」以降、常に新海監督の新作だと私は思っています。 単純に好みの問題かも知れませんが、自分にはすごく響くんですよね。
今回は今迄と若干スタッフが入れ替わっていて、中でもずっと一緒だった天門さんが外れていたのには驚きました。
正直、音楽が天門じゃない新海作品には不安があり、とても残念でもありました。
それは他の方達も同様だったようで多くの問い合わせがあったのでしょう、後日オフィシャルHPで経緯説明があった位です。
そんな心持ちだったのですが、実際に耳にするととても気持ちの良い音楽で、作品にとてもフィットしていました。
メロディーが残るというより、それぞれの心情やシュチュエーションにうまく絡むような音でしたね。
物語は雨宿りから始まる恋の話で、50分弱とやや短めなのですがそんな事を感じさせない密度がありました。
切なくも前向きになれる、二人の吐息が感じられるような話です。
音楽や主題歌の入れ方もとてもうまく、何よりシナリオや演出に今までにない変化が見られ、新海作品として一歩前に進んだような感じでした。
私は雨の日は家の中で雨音を聞いてるのが好きで、外にはあまり出たく無いんです。
でもこの映画を観た後、何だか雨の日に出掛けたくなりました。
そんな、とても素敵な作品です。