「ゾンビ少年「彼女ができました〜☆」」ウォーム・ボディーズ かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
ゾンビ少年「彼女ができました〜☆」
監督脚本ジョナサン・レヴィン。
主演は『マッドマックス・フュリオサ』で「ニュークス」を演じたニコラス・ホルト。
【ストーリー】
大規模なゾンビ災害のあった8年後。
主人公「R」は、友人のゾンビ「M」たちと、空港を徘徊してすごしていた。
駐機している航空機に住むRには、薄ぼんやりとした意識と理性があり、それはまわりのゾンビたちも同様であった。
彼らはそれぞれに住処をつくり、まるで生きているときと同じように趣味にふけったり空港内を掃除したり、規則正しい生活をしていた。
とはいってもゾンビなので、食料として生きた人間を求める。
その脳みそを口にすると、ゾンビたちに死者の記憶がひらめく。
人間たちは壁をつくり、その向こうにひそんでいた。
あるとき物資を集めるグループが、空港に侵入する。
グループの一人、ジュリーを見た瞬間、Rの長く止まっていた心臓が強く拍をうつ。
グループは追いつめられ、Rがメンバーのペリーという男性の脳を食べると、彼がジュリーの恋人だった記憶がひらめく。
完全に彼女に恋をしたR。
逃げまどっていたジュリーを見つけ、たどたどしい言葉で安心させて、自分の住む航空機に彼女をかくまう。
なんと言うか、「ゾンビ物もここまで来たか……」と考えてしまう作品です。
『ホワイトゾンビ』(1932年)にはじまり、ジョージ・ロメロが『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』で定番化させたゾンビ映画。
今やゾンビ物メインストリームとなった、『バイオハザード』の映画化から爆増した、アクション要素満載のアポカリプス・ゾンビスリラー。
これもその一つなんですが、なんと主人公がゾンビ。
そして人間の少女とのラブロマンス。
そっち?
え、そっちで大丈夫?
イーンデス!こっちで!
このゾンビくん、最初はうーあーボーイですけど、内心はモノローグで饒舌に語られてます。
この映画をうけてか、本邦には『ゾンビランドサガ』なんて変種もあります。
こちらは登校しようと自宅を出た瞬間に轢かれて死んで目が覚めたらゾンビになってた女の子の物語。
変なおっさんにあおられて、集められたほかのゾンビ女子たちとアイドル活動をするって変態性たっぷりのストーリー。
こっちもとんでもなくおもしろいのですが、まあそれはさておき、新カテゴリ"意識のあるゾンビ"の一例で、そのマイルストーンがこの映画なんですね。
ここまで来たか……思えば遠くに来たもんだっていう。
※以下『ロミオとジュリエット』ネタバレあり※
物語の土台はシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』です。
ゾンビがモンタギュー家で、人間がキャピュレット家。
カップルはRとジュリー。まんまですな。
……いや無理でしょその二人がくっつくの。
交配できないやん。
まあロミジュリはラストは二人が死んじゃう話なので、悲恋モノとしてそのままでもいいんですが。
ですがゾンビのシェイクスピアが、
「そうはさせるか!俺はなにがなんでも甘々ハッピーエンドに着地させてやるぜ!」
とそこに大きな食材、ガイコツ勢力をドーンと加えます。
ガイコツは完全に闇堕ちしたゾンビのなれの果て。
ゾンビと人間見境なくおそいかかる邪悪な存在なのです。
この第三勢力をテコにして、二人の恋を成就させるんですね。
この辺の使い方や設定も、恋愛モノにうまく機能させて満足度の高いハッピーエンドで終わらせてくれます。
ゾンビ苦手なカップルでも、この作品ならけっこう楽しめるんじゃないかなと。
※レビュータイトルは増田こうすけ『ギャグマンガ日和2』七話、『ソードマスターヤマト・誤植編』の次回アオリ文からいただきました。