「さあ、壁を取り払おう。」ウォーム・ボディーズ レントさんの映画レビュー(感想・評価)
さあ、壁を取り払おう。
ゾンビ映画はメタファーだと言われる。そういう点では本作はかなりわかりやすい。
本作の主人公アールはいわゆるゾンビだ。ただゾンビといってもけして死者が甦ったわけではなく最近のゾンビは感染者的な扱いが多い。本作も原因不明の感染症で死者のように顔面蒼白になり、人肉を欲してただ徘徊する。人間性は失われてるはずだが彼にはちゃんと思考力があった。記憶は失われていたが自身を客観視できていた。ただ、彼ら感染者たちは隔離されてる状態なので自分たちの状況をほかの人間たちに伝えるすべがない。
人間たちは感染者たちを脅威に感じて巨大な壁で自分たちの居住区を守っている。けして感染者たちを壁の内側には入れさせまいと死守している。
あるきっかけでアールはジュリーと出会う。互いにひかれあう二人。そしてアールは自分達が自然治癒していることを伝える。我々は危険な存在ではないのだと。
しかし感染で妻を失い憎悪に支配されているジェリーの父グリジオはそれを容易に認めようとしない。感染者たちを敵とみなして殲滅しようとする。感染者と人間はお互い分かり合うことは出来ないのか。
しかし撃たれたアールにも同じ血が流れていることを知ったグリジオたちは彼ら感染者たちを受け入れる。異質な存在と恐れていた彼らは我々と同じ人間なんだ。共存共栄できるのだ。そして両者を隔てていた巨大な壁は取り払われた。
まさにイデオロギーや宗教の違いから互いにいがみ合う世界、あるいは難民問題などを風刺した物語。
ゾンビ映画はサメ映画同様やりつくされた感はあるが、ゾンビ視点での物語は斬新ではあった。ただエンタメとしては物足りない作品。主人公のアールは青白い顔してる方が神秘的で魅力的だったな。