「食事の前中後には見たくないけれど、」ウォーム・ボディーズ とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
食事の前中後には見たくないけれど、
心がゾンビになった時に見るとウォームハートになれます。
ツッコミどころは一杯。
でも、そのツッコミどころも、誰かと一緒に笑い飛ばしながら見たい映画。
中盤切なくて涙が出そうになりました。
生きているからこそ、心も体も傷つくんだね。”夢”を見られるんだね。
欲のために相手を食らいつくすことも可能だけれど、誰かのために、ほんのちょっとでもうごくこともできるんだ。
映画に現れる”壁”は某漫画やトランプ氏を彷彿とさせるけれど、
心の壁も象徴しているのかな。
攻撃は最大の防御だし、壁を作って守っていれば、”感染”を防げるかもしれないからね。
そんなふうに、笑いながらも深読みしたくなります。
けれど、感動巨編まではいかないライトタッチの映画です。
とにかく脚本がいい。
上記のようにツッコミどころも満載ですが、
主人公Rの語りでぐいぐい引っ張られます。
モノローグではそれなりに話すのですが、
声に出せるのは最初は一語文。だから結構ストレート。
で、それを表情や動きで補います。”ゾンビ”で、表情も動きも硬いはずなんだけれど、たっぷりと表現して見せてくれます。
その間が良い。
そこに、要所要所に心くすぐられる音楽がこれまた良い。
そしてキャスティング。
ホルト氏を採用した時点で、この映画の成功は決まったと言いたいです。
相棒にコードリー氏。強面なのに、おかしい。温かい。
そして、なにげに、マルコヴィッチ氏が、ラストを飾ってくれます。あのポカンとした顔!!!『RED』の印象が強かったから、こんな役が新鮮で、いつかなにかやらかしてくれるんじゃないかと、そんな意味でもドキドキしてしまいましたが、正統派的に決めてくれます。
ジュリーの役は、『ジュリエットからの手紙』のセイフライドさんをイメージしたの?と思ってしまいました。よく見ると似ていないのですが。
演出は、上記のように序盤丁寧に作られているのですが、後半は急ぎすぎ。あれよ、あれよとラストに突っ走る。勢いがいいと言えばそうなのですが、ツッコミどころが次々に出てきます。
まあ、この映画が描きたかったのはRの恋心だと思えば許せますが(笑)。
そして、そんな映画の世界観を支える美術。
特に、Rの家の調度類が肝。Rの人柄(ゾンビ柄)を映像で見せてくれます。
と、ライト感覚でB級映画っぽいですが、作りこんでいる映画。
これを”ゾンビ”映画と認定していいのかわかりません。ホラーとグロを期待すると低評価間違いなし。
コメディタッチですが、”コメディ”映画としてみると物足りない。
ジーンと心が温かく、ほろっと来ますが、”感動巨編”と言うほどでもありません。
ちょっとグロい場面がありますし、設定もばかばかしいので、見る人・見る場面を選ぶかもしれませんが、確かにヒットするのも納得です。
誰かとつながりたくなる、そんな映画です。