「プロモーションのミスリードなどで正当な評価がされていない作品を全力で擁護させていただきます!」ウォーム・ボディーズ さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
プロモーションのミスリードなどで正当な評価がされていない作品を全力で擁護させていただきます!
ゾンビの童貞感が堪らない!
えっと、最初にはっきりさせておきます。
本作はゾンビが登場するホラー映画ではなく、あくまで胸きゅんの恋愛映画です。
大事なことなので、もう一度言います。
「胸きゅん恋愛映画です!」
ゾンビにも思考がある!?
冒頭、ゾンビがうようよしている廃墟と化した空港を歩きながら、Rの一人語りから始まります。
「俺どうしたんだろ。なんだか不健康な感じだし、自分の名前もうまく発音できないし……」
やば、ゾンビの一人称ですよ!一人称の特徴として、心理描写がしやすいという特徴があります。そう、本作はゾンビRが自分の心情を、ウザいくらいに吐露しまくる映画なんです。萌え!そこが可愛くて、堪りません!
どうやらゾンビ達には、記憶が少し残っているようなんです。
なので掃除したり、意味なくセキュリティチェックしたり、生前の仕事を続けています。はい!このシーンでピンと来る方、いらっしゃいますよね?
「ゾンビ(1978)」のオマージュですよ。
ご心配なく。監督ジョナサン・レヴィンは、ゾンビ映画へのリスペクトも忘れていません。ゾンビ……、走りません!
ゾンビに思考がある。いや、カタコト喋る!しかも食べた脳の持ち主の記憶を、取り込むことができる。Rはうっかりジュリーの彼氏の脳を食べてしまう。当然、二人のラブい記憶に支配されて、ハァハァしちゃうんです。
このRのちょっと猫背で、シャイで、卑屈っぽい、奥手な童貞感が、堪らないんです。かーわーいーいー!ゾンビに感情移入、共感させる。なかなか巧いです。
しかもRは音楽マニアで、iPodより「オトガ……イイ」ってレコード派!萌え!ゾンビに萌えるとか、初めての経験です。
長生きはするもんです。映画は沢山観るもんです。
Rはジュリーを家に連れて帰り、「気持ち悪くない感じで、気持ち悪くない感じで……」と近寄るも、泣かれます(笑)そりゃそうです。で、Guns N' Roses - Patienceを流してジュリーにブランケットを掛けてやり、John Waite-Missing Youで心を開くのです。またこの二曲が、きゅんと来る!
意識レベルの下がったゾンビですが、ジュリーの彼氏の脳を食べて彼女を理解し、言葉が足りない所は音楽でコミュニケイトする!ここでゾンビと人間の恋愛ってアリかも?な説得力を持たせる。凄い!よくできてる!
ただ二人には障害がありあます。
人間はゾンビから襲われないように、バリケードを築いて生活しています。その人間のリーダーが、ジュリーの父親(ジョン・マルコビッチ)。奧さんをゾンビに襲われてから、憎しみを募らせています。
ジュリーは、他のゾンビから、骸骨軍団から守ってくれたRに、特別な気持ちが芽生えています。だってR可愛いし、イケメンゾンビだし、腐敗臭もしないしね。
自宅に戻ったジュリーがバルコニーにいて、それを見上げるRの姿。そう、本作はロミオとジュリエットを、ほのかに下敷きにしているんです。
だから名前を忘れてしまったとかいうRは、きっと「Romeo 」のRで、ジュリーは「Juliet」だと思いませんか!?
さあ、盛り上がって来ましたよ!
そんな二人が気持ちを通わせ合うのを見ていた他のゾンビにも、何かが芽生えます。
「愛の力」でゾンビに心が復活し、愛した人達のことを思い出す。少しずつ人間に戻るんです。
つまり、本作は愛があるからこそ、人間なんだ!と言ってるんですよ。
なんてロマンティックが止まらないテーマ!
ラスト、まさかこんな感じで纏めてくるとは思わなかったです。
なんという幸福感!
ジョナサン・レヴィンは、50/50の監督さんですけど。あの作品もガンの苦しい抗がん剤治療を、重くなく、でも軽くなく、コメディ色豊かに、クールに、暖かく、またラストは幸福感までありましたよね。 この匙加減、凄いです。
また選曲のセンスがユニークなので、洋楽ファンには堪らないです。
だって、Rが家に帰ったジュリーを追っていく時に流れるのが「Scorpions - Rock You Like A Hurricane 」です。彼女をハリケーンみたいに揺らせよ!かなりエッチな曲!しかしイントロだけという(笑)まぁ、絶対に揺らさないからね。なんだろう、いちいち心掴まれます!
私、「50/50」と本作で、完璧にジョナサン・レヴィン監督に魂を奪われました。
主役のニコラス・ホルトが可愛い!テリーサ・パーマーが可愛い!スタイルが良い!
「マッドマックス 怒りのデス・ロード(何この副題!)」は観るつもりはなかったけど、ニコラス君目当て思わず観てしまいました。