「嘘とビデオテープ」サイド・エフェクト 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
嘘とビデオテープ
ソダーバーグ監督の劇場引退作「サイド・エフェクト」を観ていたら
監督の長編デビュー作「セックスと嘘とビデオテープ」を思い出してしまった。
二作の主題が呼応しているような気がした。
(デビュー作が一番好きだったので、勝手にそう思ってしまっただけかもしれないが…。)
デビュー作は、嘘から逃れようとした話だった。
本作は、嘘にのめり込む話だった。
デビュー作の登場人物たちは、ビデオカメラの前で自分をさらけ出そうとした。
本作では、ビデオカメラの前でも嘘をついた。
デビュー作では、登場人物たちの人生が変化した。(人生が変わったというのは大袈裟かもしれないが、何かが変化した話だった。)
本作では、結局何も変わらなかった。嘘に閉じ込められたままだった。
二つを比べると、本作は暗い。救いのない話のようにも思える。
だけれども、不思議と暗い気持ちにならないのは、ソダーバーグ監督が今まで描いてきた他の作品の中で、
「選択するのは自分だよ」と言ってきたからだろうか。
人は
「セックスと嘘とビデオテープ」のグレアムにもなれるし
本作のエミリーになってしまう可能性もある。
どちらを選ぶかは自分自身なんだなあと思った。
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他に本作がとても良いなあと思った部分は、初めと終わりに茶色のビルが映る所だろうか。映像と音楽がカッコ良かった。デビュー作のオープニングを思い出すカッコ良さだった。
近年、ソダーバーグの映像にあまりカッコ良さを感じなくなっていた。(自分が歳をとって感覚が鈍ってきたせいかなあとも思う。)本作のカッコ良さが懐かしくもあり新鮮でもあった。
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追記
こんだけ褒めといて何だが、ストーリー自体はC.アルレーにグリシャム「陪審評決」を足した感じで、ミステリ風味というか昼メロ風味だなあとちょっと思った。ガチな社会派ミステリではなく、あくまでミステリ風な所が良いのかもしれないなあとも思った。