「残酷な旅立ち。この仕事は苦しむ事以外は考えてはいけない」茄子 スーツケースの渡り鳥 コバヤシマルさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5残酷な旅立ち。この仕事は苦しむ事以外は考えてはいけない

2022年5月21日
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鑑賞方法:VOD

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内容は、マルコという超有名選手の自殺を柱に自転車ロードレースのパオパオビール🍺teamにフォーカスした選手達の群像劇。好きな言葉は宇都宮の石仏千手観音を其々の面持ちで見つめ、その態度に対する住職の言葉『観音様がお呼びになったのだろう』物憂げな選手達の思いが空気感から伝わってきそうな所が大人な演出だなと感じました。また『いいケツしてんなぁ!』とお尻を褒めるシーンは自転車乗りにとって最高の励ましの言葉だと自分も自転車に乗るので親近感を感じました。後ろから見てケツが天を臨む姿にオーラを感じた事すらあります。いかんせんバイクレースは日本人には馴染みが薄いのでとっつきにくいかもしれませんが、美しい映像とレースの疲労感は半端なく伝わったと感じます。アニメは流石高坂監督。無類の自転車好きで有名で面白さとストイックさを伝えたかったんだろうなぁ。冒頭のマルコの暗黒への下向きの映像は死をあからさまにイメージしてゾッとしました。死して尚走り続けるんだろうなぁ。ザンコーニの孤独な姿は終始喪中のマルコにフォーカスされていて、バイクレーサーの苦悩と解放感と諦観に飲まれていて憧れのマルコへの追悼の意志の現れで、残酷で逃げる事の許され無い自転車レース世界に自分の苦悩と共傷の結論として一周残し上がったのかもしれないと考えるとマルコの呪いは自転車レース世界の激しさや修行僧感が痛いほど伝わりました。ゴール直前のザンコーニの神にも見える瞬間がとても美しい。残酷なレースからの一時の救いを感じました。絶え間なく修行する姿は神との対話を期待してる様にも感じます。自分も自転車に乗っている時は脳内BGMが流れているのでお経と同じなのかもしれません。正に自転車レースは華やかな世界に見えるが実は内面は、耐え難い修行と限界までの挑戦の苦しさで、それでも勝負の世界に囚われてしまった諦観が大人な映画だなぁ。アニメーション作りの世界にも同じ様なストイックさで完成を目指す姿が表されている様にも感じました。業にまみれた罪な世界です。そんな中でも自分の人生の為に生きたい!そんなメッセージが痛いほど響きました。最後の自転車唱歌は忌野清志郎の歌声は懐かしさと共に自分も歳をとったなぁと感じます。残酷なそれでいて楽しい話です。また自分も自転車乗ってみようと感じました。

コバヤシマル