「影武者の悲哀と幻のような栄華」影武者 しんかいぎょさんの映画レビュー(感想・評価)
影武者の悲哀と幻のような栄華
影武者は随分昔にDVDをレンタルして見て以来となる。先日テレビで放映されていたのを録画して、2度目の鑑賞の機会に恵まれた。
見るにあたって、よく黒澤監督はカラー時代の作品を酷評されるから、それがなぜなのかということも頭の片隅に置いて鑑賞した。通して見た結果、観客側の気持ちを盛り上げようという姿勢が、モノクロ時代から比べてあまりないような気がした。あと誤解がないように付け加えたいが、だからといってこの映画がつまらない映画かというとそういうことではない。
むしろ私はこういう映画は好きな方だ。
これは私の勝手な推測だが、カラー作品である影武者を見ていると、より多くのモノ(あるいは情報)を画角に収めようとしているように感じた。映画が合戦モノだからかもしれないが、同じ合戦モノである七人の侍はもうすこしカメラはミクロに寄っていたように思う。あと、役者の立つ位置や動くときの導線、カメラの位置など含めた、構図全般に対して、より神経を使っているような印象だった。
とするとそれはどういう理由からきているのか、、、フィルムがモノクロだった時代からカラーに変わり、色というものをどのように料理すべきかという模索の最中にあったのかなと思えてならない。
結果的には、ドラマで客を盛り上げる映画ではなく、監督の言いたいことを構図で表現しようとした映画だったように思う。個人的には、旧ソ連のタルコフスキーのような作風だなと感じた。
コメントする