「ゴジラ、2度目のハリウッド挑戦。初代へのリスペクトを感じる正統派怪獣映画。」GODZILLA ゴジラ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
ゴジラ、2度目のハリウッド挑戦。初代へのリスペクトを感じる正統派怪獣映画。
日本が世界に誇る怪獣映画『ゴジラ』(1954)の、ハリウッドによるリブート作品。
ハリウッド版『ゴジラ』シリーズの第1作であり、有名怪獣が一堂に会するシェアード・ユニバース「モンスター・ヴァース」シリーズの第1作でもある。
太古の眠りから目覚めた怪獣ムートーと怪獣王ゴジラが激しい闘いを繰り広げる。
脚本に名を連ねるのは『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』の、映画監督フランク・ダラボン(ノンクレジット)。
主人公であるアメリカ海軍大尉フォード・ブロディを演じるのは『キック・アス』シリーズや『アンナ・カレーニナ』の、名優アーロン・テイラー=ジョンソン。
秘密機関「モナーク」に所属する生物学者、芹沢猪四郎博士を演じるのは『バットマン ビギンズ』『インセプション』の渡辺謙。
フォード大尉の父親である核物理学者、ジョー・ブロディを演じるのは『リトル・ミス・サンシャイン』やテレビドラマ『ブレイキング・バット』シリーズの、名優ブライアン・クランストン。
フォード大尉の妻、エル・ブロディを演じるのは『キル・ユア・ダーリン』『オールド・ボーイ』のエリザベス・オルセン。
芹沢博士の助手である古生物学者、ヴィヴィアン・グレアムを演じるのは『わたしを離さないで』『ブルージャスミン』の、名優サリー・ホーキンス。
15年前の原発事故で命を落とした、フォード大尉の母親サンドラ・ブロディを演じるのは『ポンヌフの恋人』『ショコラ』の、レジェンド女優ジュリエット・ビノシュ。
惨憺たる評価に終わったゴジラ初のハリウッド進出作品『GODZIRRA』(1998)。そのリベンジを果たすべく、再びゴジラがハリウッドに殴り込み!
OPではビキニ環礁の核実験とゴジラの背びれが映し出され、なにやらシリアスかつサスペンスフルな物語が始まりそうだとワクワクさせられる。
序盤のフィリピン、そして雀路羅市(外国人の考える日本の典型のような街)の展開では、なにが起こっているのか細部は分からないまでも、怪獣絡みのヤバいことが起こったことが伝わってくる。短い時間で伝えるべき内容を過不足なく語り切っており、話のつかみとして上手い。
導入部が終わり、主人公のフォード大尉登場。ゆく先々で怪獣被害にあう可哀想な人。
フォード大尉とその父親が、隔離地域となった雀路羅市に潜入するところが、個人的にこの映画で一番のお気に入り。ちょっとミステリータッチで映画に引き込まれる。
主人公登場時の描写により、この映画のテーマの一つが「家族愛」であることを示唆。
徹底して個を排除していた『シン・ゴジラ』とは対照的。こういう家族愛とかをテーマにしているのが、良くも悪くもいかにもハリウッドっぽい。
なんだかんだあって怪獣登場。渡辺謙との遭遇で、なし崩し的に作戦に参加する主人公。渡辺謙演じる芹沢猪四郎は、当然初代のキーパーソン芹沢大助と監督の本多猪四郎から名付けられたのだろう。ゴジラの存在を人類が認識したのが1954年であったりと、この映画における初代へのリスペクトにはすごく好感がもてます。
…ただ作中で芹沢博士がしたことといえば、眉間にしわ寄せながら「ゴジラとあの怪獣を戦わせるのじゃ!」と小学生みたいなことを言ったくらい。もうちょいなんか活躍せーや💦
中盤で満を持してゴジラ登場。昆虫型怪獣(ムートー)と比較にならないほど強そう。さらにハワイ上陸時の津波で島民がエライことに…。
雀路羅市の避難区域といい津波の描写といい、3.11からわずか3年しか経っていないにもかかわらずこれらを描写するところに、制作側のちゃんとしたゴジラ映画を作ろうという気持ちがこもっている。
とどのつまり『ゴジラ』シリーズにおける怪獣とは災害や戦争のメタファーなわけで、ここを疎かにしてしまうと途端に安っぽくなってしまう。そのあたりを理解しているとは、本作の監督ギャレス・エドワーズはなかなか話のわかる男のようだ…。
その後、実は怪獣にはオスメスの2匹が存在していることが発覚。より身体がでかいメスも復活して2匹揃ってアメリカを舞台にゴジラとプロレス。
最終的にはゴジラの必殺技、熱線放射でムートーを倒して映画終了。直接体内に熱線放射されるの痛そう。
結局いつもと同じ展開じゃねーか!なんて野暮なことは言わない。ゴジラの熱線はもはや様式美なんです。
ただ、最後の怪獣プロレスは終始画面が暗くて何が起こっているのかなんだかよくわからん。
それと主人公が色々頑張るんだけど、これ人類の雑な作戦の尻ぬぐいしてるだけじゃねーか。無理矢理主人公の見せ場作った感じがしてなんだかなー、とモヤモヤしてしまう。
また、本作に限ったことではないとはいえ、ゴジラを人類の脅威ではなくお助けアイテムみたいに描くのはあんまり好きじゃない。やっぱりゴジラにはいつまでもヒールでいてほしい。
正直言うと、せっかく往年の大俳優ゴジラを起用したのだから、もっと面白くできたはず!という気持ちはある。
しかし、流石ハリウッド制作なだけあって映像に迫力があり、途中ダレることもなく最後までハラハラドキドキしながら観ることが出来ました。
それに人類側の家族愛だけでなく、対比させるように怪獣の種族愛みたいなものを描いてたのはちょっと面白かったです。
両手をあげて傑作とは言いませんが、オーソドックスな怪獣映画とかて手堅く纏められており、これなら十分に合格点をあげられるのではないでしょうか。
ついに幕を開けたモンスター・ヴァース。次はあの米国が生んだ巨猿の登場だっ!🦍