風立ちぬのレビュー・感想・評価
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『魔の山』とモネの『日傘の女』をリスペクト。
震災で始まり、空襲で終わる。
それがなければ、この映画はベタなメロドラマに過ぎない。
彼らは天才的な技術者であっても、中国人にとっては、ある意味『オッペンハイマー博士』のような方。
空襲の戦火や黒雲のあとに彼らの作った飛行機の残骸が現れる。つまり、下に住む人たちは日本の本土とは限らない。戦闘機や爆撃機は敵を攻めるものなのだから、国土で落ちて残骸にならないのだから。
DISNE◯映画故にの美国のやった愚行等の微塵も出てこないが、それ以上の事を近代国家以前の大日本帝国は海外へもそして自国民に対しても行っている。
それが最後に分かり、共感とする。
追記
これから、僕は近代国家になったかもしれないドイツへ向かう。
追追記
彼の最初に作った爆撃機はユンカース急降下爆撃機にそっくりだが、実用されたのだろうか?
大人になったから理解できた
ジブリの中でも宮崎駿作品が大好きで、今まで駿作品を何度も繰り返し見てきましたが、風立ちぬだけは、レビューや、色々な考察を見て、どこか忌避しているところがあり、今日初めて最初から最後まで見通しました。
「堀越二郎が仕事に没頭して病気に侵された妻を放ったらかしにしている」、「カプロー二は『ファウスト』のメフィストで、望みを叶える代わりに菜穂子を連れて行った」などの感想や考察がありますが、私は純粋に、この映画を見て、ただただ感動しました。
まず、堀越二郎さんは、困った人や助けを求める人に分け隔てなく手を差し伸べるような優しさや、困難が立ちはだかっても諦めずに立ち向かう勇敢さを持ち、嘘や偽り、羞恥に誤魔化されない清廉な心を持つ、格好いい男です。駿作品のどの主人公にも劣らない、素晴らしい人物です。
この物語は、菜穂子さんとのラブストーリーのように評価をされる方が多いですが、私は、そこに重きが置かれているわけではないと思いました。
日本が、貧乏で武力的にも弱い時代。堀越さんは、最初は美しい飛行機を作りたいだけだったかもしれませんが、そのためには、お金を工面するため軍が要望してくるような戦闘機を作らなければなりません。また、仕事を進めていく中で、日本と世界との飛行機製造技術の乖離を突きつけられ、いつしか日本の先頭で、飛行機製造を担っていくことになります。堀越さんは、決して聖人ではないと思います。自分の夢を叶えるために、戦闘機を作る覚悟もしていた。誰しもが経験したことのある、夢と現実との葛藤です。そして、多大な融資を受けた仕事を遂行する重責を感じる日々。その堀越さんのロマンに加えて、計算や、理論では推し量れない、菜穂子さんとの「愛」がある。この、温かく我儘な二人の愛は、言葉で片付けられません。
菜穂子さんが結核に侵されている時、堀越さんが煙草を吸うシーンがありますが、レビューでは、「堀越さんが冷たい」と書かれてあるものがありました。でも、物事の分別よりも今の二人の時間を優先してしまうことってあると思うんです。二人は、一日一日を大切に、人間的に生きていくことを望みました。堀越さんが冷たいのではなく、お互いを想う気持ちが止められなかった、ただそれだけだと思うのです。「美しいところだけ…」というセリフで、もちろんそれもあると思いますが、菜穂子さんは、堀越さんが飛行機を完成させるまで、一緒にいてあげたかったのかなとも思います。
最初は、なぜ今まで見ていなかったのか、とも思いましたが、社会を知り、愛を知り、今だから感動できた、という気持ちの方が大きいです。日本人、全成人に見てほしい素晴らしい映画です。
日本を背負って発展させた先人達に感謝を持ちつつ、私たちの使命を痛感しながら、堀越さんのように世界を先駆け、日本を支えられるよう、明日からまた精進していきたいと思います。
何を伝えたい作品なのか分からなかった
ジブリの中では長い(120分超)のに薄く、正直退屈してしまった。
実在の人物を忠実に描くためには仕方ないのかと思ったけど、「堀越二郎」は名前と職業のみ借りていて、彼の中身は風立ちぬの作者とのこと。創作であればやっぱり微妙と思った。
「生きねば」というほど主人公が生きるために苦労しているように見えない。
この国はどうして貧乏なのかと言いつつどこか他人事のように見える。
美しい飛行機を作りたいという純粋な夢が殺戮に繋がることを、葛藤している描写が特にない。
ぼんやりしてて変わり者で優しいのは魅力的だけど、ただそれだけなので物語も平坦に進む。
他の人も話している声問題もやっぱり気になった。
耳をすませばの雫父もなかなかの棒読みでびっくりしたけど、あれはどこにでもいる普通のお父さん感があって逆にいいんだろうなと思えた。でも堀越二郎はこの作品の主人公でずっと中心にいるので、更に物語を平坦に感じさせる一因になっている気がした。そもそも青年役にしては声が重たいような、、
また、ヒロインは二郎に恩があり少ない交流の中で好きになる理由が分かるけど、二郎はなぜヒロインを愛しているとまで言えるのか最後まで分からなかった。
再会してからは紙ひこうきで遊んだくらいでは?
唯一、
周りの人が「健気だ」と当たり前に助けてくれるのは都合がいいなと思いつつ、
菜穂子が(おそらく)自分の限界を悟り束の間の夫婦生活を強行したところ、「美しいところだけ好きな人に見てもらったのね」という上司の妻の言葉には感動した。
少年の夢
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少年時代から航空機の設計技師になりたかった主人公が、
見事にその世界のエリートとして日本初の飛行機を開発する。
でもその技術は零戦に使われる悲しき運命。
あと嫁も結核で早くなくしてしまう。
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少年時代の純真な主人公が夢をかなえる物語。
でももうちょい嫁のことを大事にして上げなさいよ。
と言っても今と時代背景が違うから、行動に違和感を感じるだけで、
彼は彼なりに妻を愛しているというのは伝わったからいいか。
宮崎駿監督からの激励
結論として、面白かったし、テーマ性も良かった。テーマ性というが宮崎駿の言いたい事は、作品を見る『日本の少年』達に対して二郎のようにいろんな障害に揉まれながらも藻掻いて自分の目的に向かって邁進していけという激励かと思う。
夢という象徴を多様した作品なので、物語は実際の日本の出来事ではあるが夢の描写が視覚的なファンタジー要素となっており、子供でも楽しめる内容だと思う。全体的に宮崎駿の趣味が全開となっている感じがしたし、堀越二郎 = 宮崎駿のようにも感じた。
戦争の泥臭さとは隔絶された場所での彼の格闘は、勝ちにつながらなかったが二郎を中心に『ゼロ』の結実に向けて前進し目的を達成したという意味で価値があると思う。また、里見菜穂子のポジションは堀越二郎の頑張りになくてはならなかったものだと思う。個人的には、最後の描写も含めてグレンラガンというアニメ作品における登場人物でヒロインであるニアが思い浮かんだ。
今作を見てあらためて主人公に目的意識があり、その障害と格闘してあがいていく作品は面白いと学んだ。
最近ジブリ映画は観なくなっていたのだが、庵野秀明が声優をやっている...
最近ジブリ映画は観なくなっていたのだが、庵野秀明が声優をやっているというのを今更ながらに知り、金曜ロードショーで視聴。前知識はその程度しかなく、視聴が終わった後に調べて零戦を設計した堀越二郎をモチーフにした作品であると知りました。個人的に時代がどんどん流れて行くのが非常に良かったです。一つの場面の長さが少なく、飽きが来る前に次のシーンへと移り変わります。
二郎は菜穂子に出会うまで仕事一直線という感じであり、出会ってからも仕事がメインという感じでまさに仕事人間という感じです。菜穂子が療養所に行ってしまっても追い掛ける様子もないため、結婚するために家まで行ってたのに理解出来ないと思った人も多いのではないでしょうか。しかし二郎は菜穂子の意図を汲み取り、仕事を続けることを選びます。
仕事をしたことが無い子供はもちろん、おそらくものづくりの仕事に一切携わったことがない人は面白くないと思うのでは?と偏見ながら思ってしまいます。私自身は文系ですが、二郎が飛行にのめり込むことが非常に納得出来ます。それほど二郎の環境は恵まれており、理解のある上司、ライバルというよりも共に高め合う同僚、応援してくれる菜穂子。仕事に邁進し、夢を追い、技術を高める環境が整っています。
近代化して行く日本が太平洋戦争を経て焼け野原になる。その一端を担った二郎は自責の念に囚われるということがありません。薄情だとか罪悪感が無いのかと怒る人もいるかも知れませんが、零戦が出来ようが出来なかろうが戦争は起こったでしょうし、そこにいちいち罪悪感を持つなんてのもおかしな話です。
人を選びますが先述した通り、ものづくりの経験がある人には非常に楽しめる作品だと思います。最初は酷い棒読みだと思った庵野秀明の声優も段々癖になって来ます。感情移入させない為に庵野を起用したそうですが、後半ちょっと上手くなってるのもいい塩梅です。恋愛映画だと思って観るとなんじゃこりゃ?と思うことは間違いないです。
「日傘の女」をコードに風立ちぬを読む
菜穂子が、丘の上にパラソルを立てて、スカートを揺らめかせて、絵を描いている場面をみて、モネの「日傘の女たち」を思い起こした。モネの妻のカミーユが若くして病気で死んだように、菜穂子も死んでしまうということが暗示されているように思う。
二郎は美しいものが好きで、その最たるものが飛行機である。きっと二郎は飛行機の次に菜穂子が、美しいから、好き。二郎は美しいものにしか興味がない。たとえば、美しくない妹との約束はいつも忘れる(美しくないから興味がない)だからこそ、妹にも「にいにいは薄情者です」と言われてしまう。
モネも妻のカミーユが死んだ時、「深く愛した彼女を記憶しようとする前に、彼女の変化する顔の色彩に強く反応していたのだ」という言葉を遺し、彼女の死顔を「死の床のカミーユ・モネ」という絵に残した。妻への愛情より、色彩のうつろいゆく変化の方に惹かれてしまうのである。
二郎とモネという天才に共通する、薄情さ、というか、天才すぎるゆえに人間らしさが抜け落ちてしまっている部分が伺えるように思う。
二郎が美しいものにしか興味がないことは、菜穂子はわかっている。だからこそ、菜穂子は一人で山に帰って、一人で死ぬ。そうすることで、二郎の記憶には美しいままの菜穂子の姿だけが残る。菜穂子は、黒川の奥さんが「きれいなところだけを好きな人に見てもらったのね」と言うように、美しい部分だけを見せる。
二郎も菜穂子も、互いに歪んだ愛情を持っているように思う。
菜穂子は絵を描く画家であり、カミーユは、画家に描かれるモデルである。描く/描かれるという差異は、死顔を見せず美しいまま死ぬ菜穂子と、美しいとは言えない青ざめていく死顔すら描かれてしまうカミーユ、という対照的な死に方にも表れる。
菜穂子は美しいまま死ぬことによって、「永遠の女」になる。菜穂子が闘病でぼろぼろな姿になったり、病気なく老いていったとすれば、きっと、美しいものにしか興味を持たない二郎は菜穂子を愛せなくなるだろう。
最後の場面でカプローニが菜穂子を「美しい風のような人だ」と言う。モネはかつて「人物を風景のように描きたい」と言い、「日傘の女」の姿を風と同化させて描いている。
つまり、この物語においては、結局、菜穂子は風景にしかすぎず、二郎が前景化されていく「二郎と零戦の物語」だ、と解釈することができるだろう。
この物語は、非常に美しく見えるが、読み解いていくと、その美しさと同じくらい残酷な物語であるといえるのである。
メモ
・永遠の女にはダンテ「神曲」のベアトリーチェも重ねられている。
飛行機・歴史好きの方にお勧めの作品
効果音は人の声、美しい絵などの素晴らしい点もあったけれど見ていて感じたのが宮崎駿が自分の好きなもの飛行機(とりわけイタリア機、ジブリも元々はイタリアの飛行機の名前)そして太平洋戦争に対する非難(勝手に満州事変をはじめ、飛行機も燃えやすく防弾性能が酷かった、輸送能力も御粗末だった)を詰め込んで作った作品だなと思った。
戦争、実らぬ恋、飛行機はジブリが推していたチェコスロバキアの戦争映画「ダークブルー」にも似た構図
当時の時代背景にそれ絡みの人物もうまく描写で来ているなと思った
宮崎駿監督の憧れ
ちょっと前に映画館でジブリを観まくったので、その勢いで連休中に観ていなかったジブリ作品を観てみよう個人的キャンペーン。というわけで「風立ちぬ」を観ました。
エンターテイメント?散々やったからもういいでしょ。それよりも自分が昔から好きだった飛行機のエンジニアの話や憧れの大正から昭和初期の話やるべ!っていう感じの作品でした。エンジニアやってる人にはビンビン来るのかもしれませんが、私はエンジニアではないので「ふーん」でした。特に苦労している雰囲気もないしなぁ。あまり主人公に感情移入できません。
それより菜穂子とのシーンの方が好きでしたね。あの時代の恋愛の意識というか、震災で出会い避暑地での再会、山の病院を抜け出して名古屋まで来て、結婚してしばらく一緒にいて、最後はちゃんと部屋を片付けて去っていく。切ないですがカッコいいと思える生きざまです。この映画を昭和にやってたら大反響だったのではないでしょうか?
でも、なんかもう庵野秀明が棒演技過ぎて。これがわからないって元々のセンスから怪しいにしろ、もう宮崎駿監督も年寄り過ぎて耳が遠くなってたのかなっと思えてちょっと悲しくなります。色々監督は考える所があったにせよ、観てるこっちは変なものは変としか感じないです。ジブリって声優で作品自体損してる気がします。勿体ないよなぁ。
ちょっと追記
レビュー書いた後に皆様のレビュー観てるとホント賛否両論で面白いです。レビュー数もメッチャ多いですし、これだけ色んな人の意見を引き出せるって単純にスゴいと思います。改めて宮崎駿監督は日本を代表する監督だと思いました。
ひたすらに「美しさ」を追求した、巨匠渾身の一作。 宮崎駿に敬意を込めて、生きねば。
零戦の設計者・堀越二郎の狂気にも似た情熱と、妻・菜穂子との恋愛を描いた歴史劇アニメーション。
監督/脚本/原作は『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』の、巨匠・宮崎駿。
主人公、堀越二郎の声を演じるのは、『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ(監督/脚本/原作)や『さくらん』(出演)の、映画監督・庵野秀明。
二郎の友人である航空技術者、本庄の声を演じるのは『メゾン・ド・ヒミコ』『ストロベリーナイト』シリーズの西島秀俊。
二郎が所属する三菱重工業設計課の課長、服部の声を演じるのは『海猿』シリーズや『パコと魔法の絵本』の國村隼。
二郎の夢の中に現れるイタリアの航空技術者、カプローニの声を演じるのは『陰陽師』シリーズや『のぼうの城』の、狂言師・野村萬斎。
第41回 アニー賞において、脚本賞を受賞!
第85回 ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞において、アニメ映画賞を受賞!
第37回 日本アカデミー賞において、最優秀アニメーション作品賞を受賞!
原作は2009年〜2010年にかけて「月刊モデルグラフィックス」に連載していた漫画「妄想カムバック 風立ちぬ」。これは映画鑑賞後に読了。
まず注意したいのは、本作は実在の航空技術者・堀越二郎(1903〜1982)の自伝映画ではないという事。堀越二郎の人生をベースにしながら、そこに作家・堀辰雄(1904〜1953)の自伝的小説「風立ちぬ」(1937)をミックスして作り上げた、完全なるフィクションである。ヒロインの名前は堀の長編小説「菜穂子」(1941)から取られているなど、飛行機マニアと文学オタク両方の資質を持つ宮崎駿の”妄想”の結露とでも言うべき作品なのだ。
宮崎駿がアニメ制作に携わるようになって50年目という節目の年に発表された本作。公開後、宮崎駿は長編アニメ監督からの引退を発表。この映画が彼の引退作品となった(はずだったのだが…)。
本作最大の特徴、それは説明を徹頭徹尾排除しているという点であると思う。
作中、いくつも印象的な場面が描かれるのだが、それが一体なんだったのか教えてはくれない。ドイツ留学中の出来事とか、クレソン食いまくるカストルプさんの正体とか、何か意味があるようなのだがその答えは描かれない。観客が考えることで答えを導くしかないのだ。
また、二郎という男の心理についても分かりやすい形では描かれない。喜怒哀楽の薄いこの男の感情を読み解くためには、多少の読解能力が必要となることだろう。
観客をふるいにかけ、ついてこられないものは容赦なく置いていくという非常に不親切な映画であることは間違いない。ジブリなんだからどうせ子供向けでしょ、なんて思っていると痛い目を見ることになるだろう。
確かに分かりやすい映画ではない。時間経過や場面展開が唐突で、形が歪なところも少々気になる。菜穂子との恋愛描写もちょっと湿っぽすぎるんじゃないの?なんて思ってしまう。
でもこの映画、めちゃくちゃ感動するんです。初鑑賞時なんて劇場でボロ泣き…😅
その理由はやっぱり、宮崎駿が真剣に「美しいアニメ」を作ろうとしているからだと思う。整合性やストーリー性、分かりやすさを排除してでも、どうしても描きたかったものがある。そういった想いがスクリーン越しにビシバシ伝わってきて、その創作意欲と制作姿勢に胸が揺り動かされてしまった。
本作の主人公の堀越二郎は目が悪いことに対するコンプレックスを持っている。朴念仁の様でありながら女の子にはすごく興味がある。
そして、飛行機が大好きで大好きで堪らない。それが戦争の道具であることはわかっていながら、開発を止めようなどとは露程も思わない。
…いや、こんなもん完全に宮崎駿自身の投影じゃないですか!
アニメがただ消費されるためだけのコンテンツである事を理解していながら、どうしてもそれを作ることをやめられない。周囲にどれだけ敵をつくっても、同じ道を歩む息子との間に大きな壁を作ってでも、ただ自らの理想である「美しいアニメ」を作ることに執着し続ける。
純粋な熱意に突き動かされる自分自身と堀越二郎を重ね合わせ、それを凄まじい妄想力で一つの作品として成立させてしまう。宮崎駿の正直さと、純粋ゆえの狂気はやはり凄まじい。
ちなみに、「タインマスへの旅」(2006)という宮崎駿のエッセイ漫画があるのだが、この作品では宮崎駿自身が作家ロバート・ウェストール(1929〜1993)と夢とも現ともつかぬところで出逢う。この関係性は本作における二郎とカプローニのそれと酷似している。この点からいっても、二郎が宮崎駿の投影である事は間違いないだろう。
二郎は大きな挫折と絶望を経験するが、最終的にはありのままを受け入れ、自己を肯定するに至るというエンディングを迎える。
ここに、宮崎駿の50年間にわたる葛藤と闘いの日々が込められているような気がする。自分が歩んできたアニメーション制作という道は果たして正しかったのか、苦悶の末に導き出した答えを作品の中で明示してみせた。その姿勢と覚悟にもう大感動ですよ!あのエンディングを鑑賞した時、心底宮崎駿作品を見続けてきて良かったと思った。
庵野秀明の声優起用は色々と物議が醸したが、個人的には全然アリ。はじめこそ違和感があったけど、後半になればキャラクターとピッタリ一致してきて普通に泣かされます。
そもそも、自分のアバター的なキャラクターを普通の役者にやらせたくなかったのでしょう。愛弟子のような存在である庵野秀明にこそ、宮崎駿はこのキャラクターを演じて欲しかったのではないでしょうか。その師弟愛に、また胸がジーンとしてしまうのです…。
宮崎駿が引退を覚悟して作った作品。その凄みは確かに伝わりました。
やれタバコ吸いすぎだの左翼的だの、歴史認識が甘いだのとなんか公開当時は色々とケチをつけられていたような気もするが、そんなことはどうでも良い。「美しいアニメ」だった。ただそれだけです。
当代最高のクリエイターとしてその生き様を我々に示し続けてくれる宮崎駿に敬意を込めて、生きねば。
風立ちぬ
途中から涙腺ゆるみっぱなしだったので、「やばい、歳のせいか…?」と思ってましたが、皆さんのレビューでも結構、泣いておられる方がいて安心しました。
一緒にいられた僅かな時間を、本当に大切に愛おしみながら過ごす二人。
やべ、、、シーン思い出したら、また泣けてきた…。
庵野氏の棒読みをもってしても、わたしの涙を止めることは出来ませんでした。
ユーミンの「ひこうき雲」に救われた気がする
見終わってすぐにこの映画を面白いと感じられず、無の状態でエンディングの「ひこうき雲」聴いていた。歴史を全く知らない&興味がない自分はこの映画をみる資格がなかったのかもしれない。内容に関しては偉そうなことを言うつもりはないが、ヒロインと再会するのがあまりに遅すぎなのではないかと。酷評の目立つ庵野監督の声はトトロでの糸井重里ととても似た感覚で嫌いではない。宮崎駿監督が描く大人の愛をほんの少し見ることができたのが良かった。
メッセージ性
二郎の夢「ただ美しい飛行機を作りたい」は叶いはしたが戦争に使われ一機も戻らなかった。菜穂子は弱る前の美しい姿で二郎と結婚をしてその姿を愛する二郎に捧げることで寿命を減らし短命な人生を送る。この映画では「美しさを求めることは残酷である」ということがテーマになっていると思った。
また最後に菜穂子が二郎に「あなた生きて」と言う。これは妻に先立たれ、傑作の飛行機は戻って来ず、戦争も負けてしまい打ちひしがれている二郎に対して、「美しいだけじゃない人生を泥臭く生きろ。」というメッセージが込まれているのかな。監督はこれを見ている人に伝えたかったのかなと思うし、改めて宮崎駿の伝え方の上手さに感銘しました。
何かに魅せられた者の光と影。
私の身の回りでも賛否分かれる作品なんだけど、何かに心底魅せられた人間の光(エネルギー)、そしてそれ故に傍らに落ちる影を描く作品として観るなら私は素晴らしい作品だと思う。
夫婦愛の素晴らしさとか求めちゃいけない。
飛行機の美しさに魅せられ、美しい夢の世界でいきいきと敬愛するカプローニ博士と語らう堀越二郎。
彼の夢の世界のイメージ、光に溢れたカプローニ博士との飛行シーンなどは本当に素敵で、好きなものに対する喜びや理想に溢れていて、観ていてわくわくする。
(これらは監督・宮崎駿さん自身の空想でもあるんだろうね。)
あと菜穂子さんとの結婚式のシーンは本当にぞっとするほど美しい。
でも自分の理想の美しさを追い求める二郎は、結果的に第二次世界対戦の日本軍の特攻作戦に加担することとなり、愛する妻・菜穂子さんの最期にも会えないのだ。
自分の夢や理想を追い求めることは美しい。
でもそれは時に誰かを不幸にもし、また自分の他の大切なものは二の次にせざるをえないという、夢追う者の背負う業は確実にある。
何回か観てるとラストの菜穂子さんの言葉は違和感を感じてしまうな(あれは二郎の夢の世界の菜穂子さんなのだから、あれでは二郎があまりに自分勝手といえなくもない)。
様々な想いを胸に、今を生き抜く
通常スクリーンで鑑賞。
原作マンガは未読、原案(風立ちぬ)は既読。
じわぁっと胸に染みて来る作品でした。多くを語らず、多くを見せず、行間が豊かで、想像力を刺激して来る描写に徹しており、心を揺さぶられました。時空を越え空間を越えて、豊かなイマジネーションに彩られた物語が、史実と小説と空想が巧みに入り乱れながら、まるで詩のように編まれていました。
堀越次郎が飛行機に捧げる情熱。彼と奈穂子が織り成す美しい生の賛歌。どれもが胸を打たれるものでした。夢、現実、苦難、愛、幸福、覚悟、後悔。およそ人生で経験するであろうことがぎっしりと詰まっているように思いました。
決して平坦では無い道のりでも、そこで出会う様々な事柄に影響を受け、時には挫折を味わうかもしれませんが、それでも進んで行かなくてはならない。想いの赴くままに。
混迷している時代だからこそ、己を見失わずに生きていくことが大切ではないかと訴えているように思いました。懸命に生き抜くこと以外に、大切なことがあろうか!?
[余談1]
主題歌「ひこうき雲」が見事なマッチング。本作と出会ったのは運命の仕業だと思いました。見事な余韻に痺れました。
[余談2]
宮崎駿監督の引退作として公開されましたが、その後宣言は撤回され、真の引退作となる「君たちはどう生きるか」の公開が待ち切れない今日この頃であります!
[以降の鑑賞記録]
2014/? ?/? ?:DVD
2015/02/20:金曜ロードSHOW!
2019/04/12:金曜ロードSHOW!
2021/08/27:金曜ロードショー
※修正(2024/05/21)
ある意味1番好きかもしれない
賛否両論あるようですが美しいけれど美しいだけじゃないとても素晴らしい映画だと思いました。二郎の菜穂子と仕事のどちらか選べないところは残酷ですがそれがリアルだと思いました。菜穂子が死ぬことをわかって見るとさらに切なく「1日1日を大切に生きたい」というセリフが胸にしみました。見返すたびに感想が変わる映画だと思います。本当に泣ける映画です。音楽もジブリのなかで1、2番目くらいに好きな美しい音楽です。少し残念なのはやはり主役の声でしょうか、、、さすがにちょっと、と思ってしまいます。宮崎駿の考えることはよくわからないと改めて思いました。
美しい表現とさりげなさ
歴史番組で紹介されるような、偉人の一生をジブリテイストに落としこんだような作品。
宮崎駿らしい遊び心や間の置き方が詰まっていて引き込まれた。
登場人物の会話や心の動きの描写にわざとらしさが無くさりげない。いい意味であっさりしている。
当時の日本の様子を文学的な雰囲気の中で生かしながらまとめるのは流石。
音に注目
劇場で見るまでにメイキング番組を見まくっていたせいで
最初はすべて口で出しているという音が気になって
そのあと色が気になって
そのあとの地震のシーンで小さい人の動きが気になって
気になっていたんだけどいつまで気にしていたかは不明です。
気が付けばどっぷり世界へワープしていました。
切なくて美しい映画でした。
ハッピーエンドが大好きな私が好きだと思える映画でした。
もう一度早く見たい。
いびつ。ある意味純文学
この作品を見た多くの人がどう受け取って良いのか戸惑ったという感想をちらほら聞きます。分かりにくさの原因は第二次世界大戦の前夜を舞台に実在の人物である堀越二郎を素材に選んだことでしょう。
堀越二郎は宮崎駿自身、飛行機設計はアニメ作り、と解釈すれば極めて分かりやすくなるでしょう。
それを面白いと思うかどうかは人によりますが、私にはけっこう興味深かったです。
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