「個人的には最愛のボリウッド映画かも」命ある限り 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
個人的には最愛のボリウッド映画かも
日本でもわりとヒットした『きっと、うまくいく』が入ってきたときに、一緒に買い付けられて公開された4作品のうちの一本だが、4作品の中で一番強烈な印象を与えてくれたのが『命ある限り』。インド映画といえば大仰なくらいの感情表現とドラマチックなハイテンション、壮大な大風呂敷でたちまち映画の世界に惹き込んでくれるわけだが、これはメロドラマとしてのスケール感が凄まじかった。
冒頭は完全に『ハートロッカー』のパクリで、シャー・ルク・カーンは命知らずの爆弾処理班。防護服も着ることなく、危険な現場に現れては、天才的な手さばき指さばきで爆弾を解体してみせる。
なぜこれほど命の危険に自分を晒せるのか(ちょっとネタバレします)。『ハートロッカー』はそれを戦場PTSDの問題として掘り下げていたが、こっちはボリウッドのメロドラマ。主人公には、命を投げ売ってでも守りたい恋人がいて、自分と恋人を引き裂いた神に挑戦するために、「オレを殺せるなら殺してみろ!」と最も危険な場所に身を晒してたのだ。
つまりこのメロドラマは、愛VS神の戦いなんですよ! そこから一気に10年前に遡り、生涯の一度の運命の恋の物語へと突入、さらには誰もが応援せずにいられないセカンドヒロインを投入して涙を搾り取る。韓流ドラマの影響もありそうなバカバカしい展開の連続だけど、インド映画のボルテージで描かれると謎の説得力に押し流されてしまう。呆れて笑って感動できる、まるでインダス川の濁流みたいなロマンス映画でした。
セカンドヒロインを演じたアヌシュカ・シャルマはその後の『PK』も素晴らしかったし、ずぶ濡れで哀しい目をするシャー・ルク・カーンは絶品だし、カトリーナ・カイフの貫禄美には降参するしかないし、『きっと、うまくいく』と丸かぶりのラダックやパンゴン湖の景色も美しいわで、どうしても近年入ってくるボリウッド大作はアクション寄りが多いだけにこういうドベタな濃厚メロドラマもまた見せてほしいところです。
