「独創性!生命力!父と娘の絆!」ハッシュパピー バスタブ島の少女 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
独創性!生命力!父と娘の絆!
無名のスタッフ・キャストによる低予算映画ながら、今年のアカデミー賞で作品賞にもノミネートされた話題作。
何と言っても一番の注目は、主人公の少女ハッシュパピーを演じたクヮヴェンジャネ・ウォレス。
愛らしくて感情表現が豊かなだけの子役とは違う、映画を堂々と背負って立ったこの存在感!
子役と呼ぶのは失礼、立派な女優である。
社会から断絶された島で父親と暮らすハッシュパピー。
自由気ままに生きてきたハッシュパピーの世界に異変が。
島を大嵐が襲う。父親を病が襲う。
ハッシュパピーの世界が音を立てて崩れ始める…。
貧しくも自然や動物たちに囲まれた生活描写がリアルである一方、終始ハッシュパピーの視点で語られ、おとぎ話のような感も。困難や恐怖の暗示として登場する太古の野獣オーロックスがファンタジー性をプラス。
厳しい現状を乗り越える逞しい生命力、自然への敬意、生への問いかけ…瑞々しく高らかに謳い上げる。
もう一つ、物語の軸となるのが、父と娘の絆。いや、もう一つではなく、メインと言ってもいい。
父ウインクはかなり粗暴。
その分、娘への接し方や愛情表現は、ストレートで熱く激しい。
ハートフルではないけど、父と娘の強い絆が感動を呼ぶ。
父ウインクを演じたドワイト・ヘンリーが名演。(本作へ出演する前は素人!)
これが初の長編監督作となるベン・ザイトリン。
ベン・アフレックやキャスリン・ビグローを蹴落としての監督賞ノミネートは、正直未だに違和感を感じるが、この独創的な才能は否定出来ない。
また一人、次回作が楽しみな若い監督が増えた。
映画はフレッシュさとイマジネーション。
不思議な魅力を持った、リアルな現代の寓話。
どうでもいい事だけど…
オーロックスが乙事主そっくり。